2018年10月

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お待たせしました、日曜のレポートです。例によって長い導入部から始まります(笑)。

日本は「シルクロードの終着駅」と呼ばれてきた通り、古来から東西文明・文化の良いところを数多く集約し、自国のものとして消化してきた。その一例が今日から開幕の、奈良国立博物館の「正倉院展」で拝める宝物の数々である。

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一応宣伝させてもらいますが、この本は私の同級生が編集を担当したものです(実話)。

さて、時代は現代になってもその伝統は続いており、ロックも例外ではなく、ことハード・ロック/ヘヴィ・メタル、プログレッシブ・ロックにおいてはそれらを生み出した英国でもほぼ絶滅しかけているものが残っており、今やそういう「懐かしい音で新しい楽曲をやる」バンドが最も多く現存するのは日本ではないかとさえ思えてくる。
そう、まさしく日本は「ロックの正倉院」と呼んでも差し支えないと私は思う。

確かに今もこれらのジャンルで新しいものは国の内外問わず多く出てきてはいる。だが、テンポが速すぎとか音を詰め込みすぎとかで、何かが違うのだ。
それに、新世代のギター・ヒーローと呼ばれる存在でさえ数少ないのに、キーボードでスター・プレイヤーと呼ばれる人がどれだけいるだろう?今では技術の飛躍的な進歩により、機材のコンパクト化、ひいては打ち込みでの代用も増えたが、やはりロックのキーボーディストは要塞に囲まれて卓越した技術を見せてほしいのだ。

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こんな感じのね。なお、この要塞の所有者は関西の人ではないので今回出演していません。

そこで立ち上がったのが今回の主催者である片岡祥典さん。昨年の大阪城野音での一大イベントを成功させた人であり、今回は自らも出演して演奏という力の入りようである。

そしてトップに掲載したフライヤーをご覧になればわかる通り、錚々たる奏者たちを擁したバンドが集結した。今回はスケジュールの都合によりFORCEFIELDの出演は叶わなかったが、後述するようにキーボードの岡田氏はゲストで出たので、名前の挙がったキーボーディストは全員出演したことになる。

それでは本題に入ります。お、今回は導入部が短く済んだ…実はこの文章、一度書きかけて佳境に入ったところで全部消えてしまって、書くのは2度目。だからあちこち端折りつつ言いたいことだけ要約して書いてるわけ。

今回の会場は八尾ということもあり、私の家からほど近い。とは言え、乗り換えしなきゃならないから結局難波や日本橋まで出るのとそう変わらないのだが。

そして駅に着いてから方向音痴が発動してしまったために迷いに迷い、到着したのは開演ギリギリだった。

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そして空いてる席を見つけて座った頃には開演したのだった。

Claudia Project (feat.石上文)

元々は新生CRYSTAL ARROWとして出演する予定だったが、諸事情でこういう形に。フロントの女性陣3人以外のリズム隊はサポートで、ドラムは堀江仙人。Ayaさんの入院やそういう事情もあっていろいろ懸念されたが、結果的にはこれで良かったとさえ思えるものであった。
オムニバス収録曲以外はAyaさんのソロプロジェクトからのインスト曲やTERRA ROSAのカバー曲等だったが、他のところでもよく一緒にやってる3人だけに息はピッタリ。Ayaさんの重厚な演奏と豪快なアクション、薫子さんの素晴らしい歌唱力、Mayuさんの巧みなギタープレイが強力なリズム隊に支えられ、心配は杞憂に終わった、どころかそれ以上に満足させてくれたのだった。

PRIMAVERA (feat.山内めぐみ)

続いてはSTARLESSとの対バンで既にお目見えのプログレッシブ・バンド。複雑な展開ながらも親しみやすいメロディと和風なテイストが特徴。こちらも女性ヴォーカルだが見事な表現力。そしてMeiさんはシンセとオルガンを巧みに使い分け、またハイトーンのコーラスも圧倒的。
なお、MeiさんのMCも面白くてこれも聞きものだったかも。

ALL IMAGES BLAZING (feat.片岡祥典)

続いては今回の主催・企画・運営の片岡さん率いるプログレッシブ・バンド。こちらも長くて複雑な曲が中心だが、歌メロはポップで聴きやすい。だから敦子さんの歌声もすんなり入ってくる。
それにしても凄かったのは片岡さんの要塞で、ここまでのお二方もかなりの重装備だったが、これだけの機材を弾きこなすのも大変だろうし、セッティングもそうだったろう。しかしそこは百戦錬磨の剛の者、見事にその凄腕ぶりを見せつけてくれたのだった。
そしてショルキーを持ち出しての演奏の途中で先述の岡田氏を呼んで彼にそちらを弾かせ、自らは要塞に戻ってバトル、という予想だにつかなかった展開。これには本当に圧倒された。

CLOUD FOREST (feat.前田里知)

プログレなバンドが2つ続いた後は、ずっしりヘヴィなこちら。ダウン・チューニングのギターと重低音ベース&ドラムに絡むは里知さんのこれまたゴツいオルガンを中心にした演奏。それに乗って歌うK.JUNOさんの歌唱力と個性的なアクションも見もの。
気がつけばその独特の世界に引き込まれる、これもまたこのバンドの凄いところなのだ。

MUTHAS PRIDE (feat.筒井佳二)

出演全バンドの中で一番オーソドックスな音楽性であり、また唯一の男性ヴォーカル。筒井さんのプレイは派手さはないものの、各メンバーを引き立てながらも随所で自己主張がキラリと光っており、南さんのヴォーカル、新加入の池内さんのギター、そしてリズム隊も見事なものだった。
王道ハード・ロックはここ日本に健在なり、それを強く感じた。

APHRODITE (feat.岡垣正志)

いよいよトリのこちらは、もう何度もレポしてるのだが毎回読んでる人ばかりでもないと思うので、やはりあれこれ書いていこうと。
それまでのバンドがじっくり聴き込むタイプのものだったのに対し、より攻撃的な音楽性。ただ、ポップな歌メロとそれに相反するような変拍子も隠し味として用いられているところがこのバンド独自のところ。
それまでじっくり座ってた客席からも拳を突き上げる姿がちらほら。もちろん私もそれに参加したが。
曲目はほぼ定番通りだが、「EDGE OF THE WORLD」後半のインプロ合戦、これが実は毎回違ったことをやってくれるためにとても楽しみなのだ。
TERRA ROSAやJILL'S PROJECTでも時にはギターを負かすほどのド迫力の演奏とアクションで圧倒する岡垣さんは、やはりここでもその存在感を大きくアピールしていた。
そしてラストの「紅蓮の炎」ではマイさんからの「皆さん立ち上がって!」という呼びかけに応え、続々立ち上がる。私もはっちゃけさせてもらった。
時間が押していたためにアンコールはなかったが、とても満足のいくものであった。

…全編通してかなりの長丁場だったけど、全く飽きることなく聴き通せたし、非常に高い満足を得ることが出来た。
出演者でかなり体調の悪かった人も何人かいたようだが、そんなことは全く感じさせない熱演ぶりだったし、何よりハード・ロックにおけるキーボードの存在の大きさというものを改めて知った思いだった。

私はロックの入り口がゴダイゴやクリスタル・キングだったりRCサクセションに熱中した時期があったりしたため、HR/HMの入り口になったLOUDNESSにもBOW WOWにもキーボードがいなかったことにむしろ違和感を持っていた。やがてBOW WOWがメンバーチェンジでVOW WOWになって「これこそ俺が求めていた音楽!」と思い、同時期に再結成されたDEEP PURPLEから70年代HRの底なし沼へとはまっていったわけだけど、やはりあの時代の、オルガンやモーグ等が活躍する古式ゆかしい音を最も美しい形で継承しているのは日本のバンドたちだという気がしてならない。
もちろん元祖であるDEEP PURPLEやURIAH HEEPは今も健在だが、本国にそれを継承する若手がいないし、かといってDREAM THEATERも良いのは良いのだが、やはりアメリカのバンドゆえか、「トッピング全部乗せ」みたいな大味さが気になってそうしょっちゅうは聴けないのだ。

伝統的な音を土台に他の要素も程良いバランスで取り入れ、新しい楽曲をやる、そういう存在は何度も言う通り日本がバンドの数も品質もトップクラスだと私は思う。
ある年代より上にはいまだに舶来至上信仰がまかり通り、国内のバンドを軽視、しまいには聴きもせずに蔑視する輩も多いが、こういうイベントが開催されることで少しでも偏見をなくしていってほしいものだ。今じゃ「BURRN!」で紹介される最近の海外のバンドもほとんど興味を惹かれるものはないし、むしろライブハウスで「これは!」というものに当たることが多いのだ。
もはや日本の伝統文化と言ってもよいハード・ロック/ヘヴィ・メタル、プログレッシブ・ロック、これらを今出来る人たちがやって、若い世代につないでいく。そしてずっと続いていってほしいと願うばかりだ。

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こちらが今回出演のバンドの曲を収録したオムニバス。非常に質の高い音楽が詰まっているので、今回のイベントが本展覧会とすればこちらは図録として、繰り返し聴いてその素晴らしさを味わってほしい。

最後に、主催の片岡さんはじめ出演のキーボード奏者の皆さん、全バンドの皆さん、お疲れさまでした。これからもますますのご活躍を祈念いたします!

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DEEP PURPLEの感動も冷めやらぬまま、昨日はこちらへ。
創業者たちがいなくなっても暖簾を守り続ける老舗の後に、その伝統芸を受け継ぐ中堅バンド(昔だったら十分ベテランと言われる域なのに)を見て、「やはり伝統文化っていいもんだ」を確認する意味もあって。
まあ、CONCERTO MOONの音楽性はパープルよりはRAINBOW、そしてイングヴェイからの影響が大きいけど、古典的ハード・ロックを正統的に受け継いでるということでは間違っていないだろう。

ライブ中のMCでも島さんが言ってた通り、今年はメジャーデビューしてから20周年になるが、いろいろあって(詳しくは恒例のメンバーチェンジ)その予定が大きく狂い、大々的なことも出来なくなってしまった。でもヴォーカル・芳賀亘、キーボード・三宅亮という新メンバーを迎えたことで急遽そのお披露目をすることになり、今回の東名阪ツアー開催という流れになった、というわけ。

まずは1曲目から「DREAM CHASER」なんて懐かしい曲から始まったが、それだけじゃなくて「SURRENDER」「RUN TO THE SKY」「HOLY CHILD」「TAKE YOU TO THE MOON」「FROM FATHER TO SON」という初期を彩った名曲のオンパレード。もちろん新しめの曲もやったが、やはりマンドレイク・ルートからの1stアルバムから追ってる身とすれば、こういう体に染みつくほど聴いた曲が連発されるのは単純に嬉しい。
やってる方は新しい曲が「今やりたいこと」だからそっちをやりたいのが人情だけど、古くからのファンは自分たちが聴きなじんで染みついた名曲を求めてしまうし、やはりファンの求めるものに応えるってことも大事だと、先日のパープルのライブで思ったわけやね。

さて、やはり気になるのは新メンバー。三宅氏はDEMON'S EYEで初めてお目にかかり、その後は三谷さんのAMADEUSとかFURY OF FEARのサポートで見てきて、その見事な腕前と若い人には珍しいオルガンを使いこなす渋い方向性が気になっていた。それがこの度こちらに加入…既にメジャーからはドロップしてるけど、国内では結構な知名度もポジションもあるバンドに入ったというのは、なかなか感慨深いものがある。
このライブでもその見事な腕前を披露、かなり前に抜けた小池氏以来の重要なキーマンになるであろうことが予感された。

そして注目は芳賀氏。どうもこのバンドはヴォーカルに恵まれないというか、それは今までのヴォーカルが悪いという意味じゃないんだけど、看板声として定着する前に辞められてしまう傾向があった。
初代の尾崎さんは日本語で綺麗に歌うのは合ってたけどパワフルさが足りなかったし、2代目の井上氏はパワフルだけど繊細さに欠けた。だから井上氏と似た感じの声ではありながらも繊細さも併せ持った久世氏はかなり良いと思ったんだけど、ご存知の方も多い通りの成り行きで辞めてしまった。
ということで芳賀氏の歌声に注目してみたのだが…これがなかなか、いやかなり良い!もちろん入って日も浅いから「凄い!」と言うには早いけど、どちらかと言えば尾崎さんに近いタイプのクリーンなハイトーン。でも声量はもっとあるし、更には安定感もある。新世代の小野正利と言ったらほめすぎか?でも、場数を踏むことによってそこまでなれる可能性は感じられた。

この前の老人たち(おいおい)と違ってまだ若い、と言っても3人は40過ぎてるけど、速くて長くて難しい曲をさんざんやって本編だけで2時間。その上アンコール2回なんだから、やはり凄腕のそろったバンドというのは強いよねえ。

アンコール曲は1回目が「IT'S NOT OVER」「SAVIOR NEVER CRY」、2回目が「CHANGE MY HEART」だったんだけど、たびたびメンバーが入れ替わって島さん以外は誰もが入って5年も経たない顔ぶれながら、完成度の高いものを聴かせてくれた。

島さんは「メンバーチェンジはもうこれっきりにしたい」って言ってたが、本当に今度こそそうなってほしいと思う。
今まで同じ顔ぶれで2枚連続作ったのは1回だけだし、今の面子なら歴代最強と呼ばれるようになってもおかしくない。心配なのは陰陽座をいろいろあって辞めた河塚氏だが、是非ともここが安住の地になってほしい。

DEEP PURPLE/RAINBOW由来の古典的ハード・ロックは日本人の感性にフィットするものであり、実際愛好家も多いのだが、いかんせんマイナーな存在に止まっているのが現状だ。かつてのVOW WOWやTERRA ROSAも華やかに活躍した時期は短かったし。今の様式美or正統派HR/HMバンドもいいものはあるけど、テンポ速すぎとか音を詰め込みすぎとかで、何か違うのだ。だから彼らのようなバンドがもっと奮起して後続を刺激、こういう「音は懐かしいけど曲は新しい」バンドが出てきて「伝統文化としてのハード・ロック」の灯を絶やさないでほしい、そう願うばかりだ。

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会場で購入のオフィシャル・ブートのライブDVD&CD。久世氏在籍最後のものになったけど、なかなかの内容です。通販でも買えるので、ライブ行く機会がない方はそちらもご利用下さいませませ。

先日のディープ・パープル、「これが最後?」と噂されるライブは実に素晴らしいものだった。

さて、どこから書いていこう?
やっぱり長い無駄話から始めるのが私らしいかな?

そもそも私が洋物のロックを聴き始めたのは高2の頃だったのだが、その時にレインボーの「BENT OUT OF SHAPE」を聴き、刺激を求めていた高校生にはあまりに緩く感じられ、正直拍子抜けした。今じゃ良いと思えるようになったんだが。
そんなんだから翌年、「ディープ・パープル再結成、レインボー解散」と知っても、後者へのショックより前者への期待の方が大きかった。
そして実際出たアルバム「PERFECT STRANGERS」は期待を裏切らない素晴らしい作品だった。

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いやほんまに愛聴しましたわ、このアルバム。だから翌85年の来日公演も見たかったけど、残念ながら浪人中のため行けなかった。

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話は前後するけど、高校を卒業する直前に「やっぱり昔のも聴かなきゃダメでしょ」とばかりに私が選んだのは、とにかく代表曲が多数入っている「MACHINE HEAD」だった。いやー、これもしびれましたね。
そして浪人生活の終わり頃に「IN ROCK」と「LIVE IN JAPAN」を買い、「大学に受かったらゆっくり聴こう」としばらく封印、志望以上の大学に合格してそこが母校になったんだが、実家に帰って聴いた両作品、特に後者は凄く刺激的で、2枚組で7曲という曲数の少なさ&長さにぶったまげ、それ以上にライブならではの迫力にのけぞり、これまた愛聴盤になったのだった。

次の新作は、曲はいいけど無理して若作りした音が好みに合わずに気に入らず、リッチーとギランの確執が再燃したためにギラン追放、ジョーが加入して作ったアルバムは良かったものの、「パープルにジョーは違うでしょ」との思いで次の来日時にも行かなかった。

案の定ほどなくジョーは脱退するが、まさかのギラン復帰、そして出されたアルバムもまたもや納得いかない内容だったために、年末の来日公演が発表された時も「ギラン来るんかなあ?いいライブ出来るんやろか?」と疑念を抱いて諦めてしまった。そしたら今度はこれまたまさかのリッチーが直前逃亡、ジョー・サトリアーニが代役を務めたというのは後から知った話だが、これが意外に良かったと聞いた半面、「この先どうなるんやろ?」とまたもや心配がよぎったのだった。

結局サトリアーニは入らずにスティーヴ・モーズが加入…実は名前だけは早くから知ってて、「何やら凄いギタリストらしい」という噂も耳にしていた。
その間に94年ホワイトスネイク、95年レインボーとライブに行き、特に後者はアルバムの素晴らしさとライブでの熱演にノックアウトされ、前回の逃亡事件でリッチーに抱いた大きな不信感を払拭して余りあるものだった。
だから余計にパープル本体がどうなるか気がかりだったのだが…

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96年の「PURPENDICULAR」は実に素晴らしい作品で、「リッチーいないけどこれならお互いにとって良かったんじゃない?」と大いに納得したものだ。
そこでその年の来日公演に行けば、3年連続でファミリーのライブを味わえたのだが、今と違って情報は雑誌に頼るしかなく、当時はヨーロッパ旅行に夢中でライブ行くのは少な目だったために多くの目ぼしいものを見逃し、パープルも例外ではなかったわけ。

それからスタジオ盤もライブアルバムも出るが、今度はジョン・ロードが脱退するというこれまでで最大級のぶったまげ。バンドの創始者であり、もはや名目上だけにはなってたが一応はリーダーだし、これで本当にパープルは終わるなと思ってたら、今度はドン・エイリーを迎えてバンドは続くことになった。

それから出た2枚のアルバムは完成度は高いものの緩さは否定出来ず、それは同時期のライブアルバムも同様だった。やはりトラブルメーカー(ギランもやろ!)と無言の圧力がいなくなることで和気藹々出来るのはいいけど、良くも悪くもそれが音に出て、こんな感じのまま続いていくのかなあと、また新たな不安を呼んだのだった。

それから長らく新作発表もなく、ツアー、ツアーの日々が続いて幾年月、8年ぶりに新作が出ることになった時も期待してなかったのだが、この「NOW WHAT?」が思いのほか良かった。ジョンが亡くなったこともあり、追悼の気持ちを込めたからか、ドンのプレイに気迫がみなぎり、それが他のメンバーをも刺激したのか、緊張感みなぎる素晴らしい作品になっていた。

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同時期のライブアルバムも同様で、それまでの緩さが嘘のように気迫と緊張感がビシバシ伝わり、長いツアー生活が現場叩き上げの感覚を蘇らせたのか?とにかくリッチーとギランの不仲が悪い方にしか作用しなかった頃が嘘のように「カッコいいパープル」が戻って来てたのが感じられた。その割には「でもリッチーもジョンもいないし」とライブには行ってなかったんだが。

でも、そういう私の心境に変化をもたらしたのは次作「INFINITE」だった。
通算20作目のスタジオ盤にして、「これが最終作になるかも」という噂。そしてまた内容が凄く良くて、再結成後では「PERFECT STRANGERS」「PURPENDICULAR」と並ぶ3大傑作と呼んでも過言ではないほどの仕上がり。更には先月になって発表された最新ライブアルバムが、またもや凄みを増していたのが決定打となった。

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加齢とともに衰えていくのが普通なのに、逆にテンションが更に上がってるのにはぶったまげた。でも、5人中4人が70歳オーバーという現状を考えれば、このテンションを保てるのもこの辺が限界だろうし、見ておくならこれが最後のチャンスかも…でもド平日だし、仕事休んで行くわけにもいかないしなあと思ってたら…

今月、1回有休使っていいですよ

え?さんざん残業させて休日出勤させまくったのに?
これは神が与えたチャンスと思い、その夜には日時を確認して翌日に申請を出し、帰ってすぐにチケットを取っていたのだった。

これがまたいい席でねえ…もちろん前の方のかぶりつきとは行かなかったが、1階の真ん中辺。ラッキー!と思った半面、「売れてないのかよ?ガラガラだったらどうしよう?」という不安もあった。

そして期待に胸を膨らませて当日を迎え、開場時間を少し過ぎた頃にフェスティバルホールに到着。

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実際席に着いてみたら、確かにど真ん中くらいでステージもよく見える。

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こんな感じ。あ、今回はスマホでの撮影はOKだったので。と言いつつ、これデジカメなんですが(笑)。でも、プロ仕様のはダメということだったから、ド素人仕様のデジカメならいいかと勝手に解釈してみた。
ちなみに、客席はガラガラということもなく、空席は確かにあったものの、私の後ろや上の階も結構な入りだった。
更に驚いたのは、喫煙所でも私の席の周りでも、若い人…大学生くらい?の姿が目立ったこと。どうせ年寄りばかりでしょ、と思ってたところにこれはたまげた。やはり今時の「ロック」に不満を抱き、「本物」が見たいという若者も多いんやねえ…なんだか嬉しくなってきた。

さあ、注意事項のアナウンスが何度か流れ、定刻ピッタリに場内が暗転、ついに開演となった!

荘厳な序曲が流れる中、メンバーが続々登場。そして全員がそろったところで始まったのは「HIGHWAY STAR」だった!
リッチーがいた頃はこの曲で始めるのがお約束だったが、彼が抜けてからはそのお約束が崩れ、いろんなパターンでのオープニングがあったことをライブアルバムで知っていた。でも、まさかこの曲で始まるとは…
ギランの声に関しては、再結成してからがリアルタイムだから、昔の凄まじいシャウトを轟かせていた人とはほぼ別人の、「変わった声で歌う並のシンガー」というイメージしかなかったもんで、思ったより歌えてて、シャウトも随所で決まっていたのが意外と言うか、かなり好印象だった。ロジャーのベースもグイグイ煽ってくるし、ペイスも思いのほか叩けている。コージーが生きている間に見れなかった私にとって、生で見た「凄いドラマー」といえばヴィニー・アピスとテリー・ボジオ、そして(これまた亡くなったけど)樋口さんということになるのだが、彼らほどの衝撃はなかったものの、他の誰でもないペイスの音であったのが本当に嬉しかった。そしてソロを取るのは元々弾いていた人たちとは違うが、ドンもモーズも自分たちのスタイルで見事に弾いていた。

続くは「PICTURES OF HOME」「BLOODSUCKER」という、昔の隠れた名曲。リッチーがいた頃ならまずやらなかったであろうこれらが聴けたのも大きな収穫。そして「STRANGE KIND OF WOMAN」。「LIVE IN JAPAN」みたいなヴォーカルとギターの掛け合いはないものの、これも良い感じ。

懐かしい曲が続いた後は、モーズの泣きが冴える「SOMETIMES I FEEL LIKE SCREAMING」。これ、ライブで聴きたかったんだよ~。リッチーも泣きの名曲がいくつかあるけど、これはモーズにしか弾けまい。
前作からの「UNCOMMON MAN」に続くは「LAZY」。ジョンのハモンドC3をマーシャルにつないだ凶暴な音のイメージが強いため、ドンのプレイは綺麗すぎる印象があるが、健闘してたことは間違いない。

そこからは最新作から3連発。「THE SURPRISING」「BIRDS OF PREY」「TIME FOR BEDLAM」。いやこれがまた素晴らしい。出来の良いアルバムなだけに、ここからの曲がこれだけ聴けたのもまた儲けものと言えよう。

ドンのソロに続いて「PERFECT STRANGERS」が出てきた後は、「SPACE TRUCKIN'」。もはやかつての長いインプロ合戦はないが、それでも一体感はバッチリ。そしてド定番「SMOKE ON THE WATER」で一旦中締めとなった。

中締めとは言いながらもメンバーは引っ込むことなく、アンコールの手拍子の中で再び各ポジションに着き、まずは「HUSH」。元を歌ったのはギランではなくロッド・エヴァンスだが、今年がデビュー50周年ということもあり、やはりデビュー曲もやらねばということでこうなったのだろう。そして「BLACK NIGHT」で全て終了。約1時間40分という今時短い時間だったが、大きな満足を得ることが出来た。

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ギランは失礼ながら期待してなかった分、「声よく出てるやん」と思えたし、フェイクの仕方も不自然さを感じさせず、だからトニー・マーティンやロブ・ハルフォードがズッコケさせたようなことはなかった。器用なイメージのない人だけに、これは嬉しい誤算だった。
ロジャーとペイスのリズム隊のコンビネーションも見事だった。そして最も大きな収穫はモーズのギターだったと思う。音楽性に幅のないリッチー(だって事実だもん)と違い、幅広いバックボーンを持つ彼にしたら、昔の曲もお茶の子さいさいといったところだったろう。でもやはり彼のプレイが冴えたのは、自分が入ってから作った曲の方。もちろんかつてのリッチーみたいな「狂気」は感じられないが、今のあちらさんがテクも求心力も落ちてしまってる以上、やはりここにいるべきはモーズなのだ。
ドンのプレイにはジョンみたいなド迫力もなければ個性も弱い(あくまで個人的な感想)。だがテクニック的には全く問題ないし、その分古株3人の持ち味を改めて引き出した、そういう利点があるのかもしれない。

選曲もいろんな意見はあろうが、私はこれで良かったと思う。「LIVE IN JAPAN」に入ってた曲も、歌えない(笑)「CHILD IN TIME」と叩けない(笑)「THE MULE」以外は全てやったわけだし、最新作からもやり、再結成後の定番曲、昔の隠れた名曲、デビュー曲と、実によく出来た選曲ではないか。

本当にこれが最後になるのか、KISSみたいに「騙された~!」となるのか、それはわからない。これで綺麗に終わらせるも良し、このままやれるまでやるも良し。でも、彼らと同年代のミュージシャンたちが70歳前後で数多く亡くなっている昨今、誰がどうなってもおかしくない。実際、ペイスの脳梗塞という事態もあったわけだし。恥ずかしながらこれが初めてのパープルのライブになったわけだけど、最初で最後になっても悔いはない。最高!もうたまらん!と言うでもないが、今のこのバンドが出来うるベストな状態の、本当に素晴らしいものが見れたのだから。

おまけ

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終演後の中之島周辺の風景。
♪大阪ビッグ・リバー・ブルース~もうそんなに~泣いたら~辛いさかい~
なぜか憂歌団のこの歌が浮かんでしまったが、ライブで熱くなった体には夜風が心地良かった。

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この3連休はあちこちでライブが被りまくり、皆さん西へ東へと大騒ぎだったようで…
関西でも初日に神戸のシェラザード、翌日に京都でYUHKIさん主催キーボード・イベントというのがあり、京都と同じ日には大阪でsomaにガチャリック・スピンも出てたらしい。
東では連休中日にクラブチッタでカルメン・マキ&OZの再結成ワンマンという特大級のがあり、関西からも多数遠征したそうだ。
そして名古屋でも他に美味しいのがあったらしいが、そちらに行った人は「宿が取れない」と嘆いていた。原因は鈴鹿サーキットでのF1レース。今回の私も、安城といえば愛知県で、行動の拠点は名古屋になるんだから、そう聞いたら泊まらずに日帰り強行軍にならなきゃいけないという焦りが生じた。

本当は、初日に神戸でシェラザード行くか、彦根で恭司さんを見て昨日と2連チャンにするかというアイディアはあった。が、それをも阻んでしまうものが入った。

ディープ・パープル…!

来日アーティストは平日公演が多いから、元は最初から諦めていた。が、なぜかこの日が休めることになったから、これが最後のチャンスと言われているのでいろいろ考えてチケットを購入した。が、問題はその高額なチケット代…それを捻出するには行きたかったいくつかを断念しなければならない。だからシェラザード@神戸もしくは恭司さん@彦根というのを断念し、とりあえず今月は最低限に抑える、そうせざるを得なくなった。

そんなこんなで当日を迎えるのだが、安城といえば私の友人がやってる有名な料理屋があり、そちらに寄ってからライブ…のつもりだったが、いつも通りディスクヘヴンで道草を食ってるとそれだけに時間も食ってしまう。おまけに安城と言っても今回の会場は友人の店から近いJR安城駅周辺ではなく、名鉄新安城駅前。これがまた方向違いで遠いんだ。だからせっかくだけど友人の店を諦めて、会場の場所を確認してからその辺でやや遅めの昼飯にして、そろそろいい時間になってきたからと会場に向かったら、向こうから恭司さんと西川さんの姿が。すっかり顔を覚えられてる私なので、軽くだけど挨拶を交わして会場に到着となった。

さて、ここから本題です(前振り長すぎ)。

田舎のライブハウスゆえ中は狭く(大阪の某吉野家地下より狭かった)、テーブルなどなしに椅子が並べられていた。そもそも前回ここでやった時にはスタンディングだったのが不評で、そのためこういう形になったらしい。でも私は前から2列目を確保したのだった。

そして定刻になり、いよいよ開演となった!

sozoro 座 mode

まずはオープニングアクトのバンド。ギター2人とリズム隊、女性のサックスという編成でインストを演奏するバンド。かといってジャズやフュージョンではなく、あくまでロックな感触。
なかなか個性的な音楽をやっていたのだが、主役をサックスにしたいのかツインギターにしたいのか、焦点が絞り切れてない感じ。誰か際立つプレイヤーがいればそれを主役にして他が支えながらも要所要所で自己主張、という形に出来ると思うのだが、まだ発展途上かな?ただ伸びしろはあるようなので、「これからに期待」といったところだった。

山本恭司「弾き語り」

15分ほどの休憩時間の後に主役が登場、アコギを抱えてスタンバイ。大阪でも毎年ロイヤルホースで川口千里バンドとやってるんだから、それを待ってればいいだろうと言われればさにあらず。あちらは回を重ねるごとに「弾き語り」の比率が減ってバンド形態の部分が増えてるし、地方巡業ゆえのはっきりした2部構成、これが面白いんです。

まずは「I'LL WAIT A LIFETIME」、続けて「LITTLE WING」から始まる。その後のMCも恭司さんが一方的に喋るのみならず観客とのやり取りもあったり、こちらはこちらで回を重ねるごとに自由度が増している。
自由度が増しているのは選曲もそうで、続くは「20th CENTURY BOY」から「BORN TO BE WILD」のメドレーにはBOW WOWの「HEART'S ON FIRE」をくっつけ、そこで「何やろうかな」と言いながら「GET BACK」「THEME OF BOW WOW」につないでしまう強引さ(笑)。この形式のライブを始めた頃は毎回選曲も似たり寄ったりで構成もきっちりしていたが、今は良い意味で好き放題やってる感じ。

続くリクエストのコーナーなんか、まさにそう。まずは「絆FOREVER」と言われて「これあちこちでリクエストが一番多いんだよね」と言いながら歌ってくれたのだが、「じゃあ次何か」に「MIDNIGHT YANNIGHT」という無茶ぶりをしたのは、何を隠そう私。「絆FOREVER」のシングルB面として発表された後は一度もCDに収録されることもなかったためか、本人もどんな歌だったかほとんど覚えていないという衝撃の事実が!「最初のキー、何だった?」(わかりません)「歌い出しは?」(♪ラム酒を~)でどうにか歌い始めるが、歌詞もメロディもまるでデタラメ(笑)。おまけに、私に「歌う?」って…( ̄▽ ̄)
そんなこんなでリクエストのコーナーはそこまでになったんだけど、高校~大学時代はもう雲の上の存在だった人にこんな無茶ぶりして、しかもこんなやり取りしてる私も大胆というか、あの頃の私に教えてやりたいな。「お前、年取ってから恭司さんとこんなに距離が狭まるんやで」と。

続いては去年亡くなったエンケンこと遠藤賢司さんの思い出を語り、「夢よ叫べ」を。これがまた感動的で、さっきのグダグダぶりと大違い。そして「このコーナー最後の曲」として披露されたのは、大作「VOICE OF THE WIND」のアコースティック・バージョン。これがまたアルバムでのエレクトリックによる完成品とはまた違う味わいで、最後はハーモニカ吹いたりE-BOWを使ったりという反則技の連発。でも、それが良い方に作用して、終わる頃には心地良い疲労感を覚えていたのだった。

山本恭司「弾きまくり」

再びしばしの休憩の後、今度はエレクトリックに持ち替えた恭司さん、まずは「NESSUN DORMA」からという意表を突くスタートで、そのまま「WARP ZONE」「SPANISH PIRATES」というハードな2連発。その後泣きまくりバラードの「ALONE」…ここまではいつもの感じからそう脱線してないが、次が全く違った。

「いつも練習の時にやってるブルースを弾くけど、渋いものじゃなくて弾きまくっていろんな奏法を見せるからね」、更には「客席にも降りるから、近くで見てね」…

そう、ステージで弾き始めてフロアに降りてきて、我々の目の前で弾きまくったんです。外道のライブで加納秀人さんもよくやってるようなことだけど、ほんまに、レコードで聴いたりたまに出るTVでお目にかかるくらいの遠い存在だった人、大学時代に行ったVOWのライブでやっと「今同じ空間にいるんだ」と思えた人が至近距離で見れてるなんて、繰り返すけどあの頃の私には想像も出来なかったよ。
そして本当にきっちりした構成だった、こちら「弾きまくり」コーナーもやりたい放題が伝播したんだろうか?これはバンド形態じゃなく、本当の1人だから出来る芸当だろう。

さて次が最近おなじみの「宇宙組曲」。ただ今回はいつもとちょっと違い、メロディアスに始まって「CAN YOU HEAR ME?」を歌いながら演奏…なんだ、ぶち壊れてなくて聴きやすいやんと思ったのも束の間、いつもより短めながらも「ぶち壊れた」世界が繰り広げられた。もう何回も聴いてたら慣れたし、おまけにはまってしまうこの中毒性というかなんというか…そして再びメロディアスな演奏に戻り、美しい「JUPITER」で安堵させて本編は終わった。

アンコール

まずはOAのバンドを呼び込んでのセッション。「サックスの子は?」の問いに「休むって言ってたけど…入る?」と、既に客席でくつろいでた彼女に呼びかけるも断られ(笑)、誰の何という曲かわからなかったけどインストを演奏。ギター3人でバトルを繰り広げたけど、やはり恭司さんは桁違い。でも、厚見さんにしてもそうなんだけど、若い人やこういう無名な人たちとも積極的に交流してるし、そういうのが大御所のポジションに胡坐をかくことなく、いつまでも進歩的でいられる原動力になってるんだなと思った。
そして最後は恒例の「HEAVENLY」でしめやかに全編が終了した。

…もう何度も見てる「弾き語り・弾きまくりギター三昧」で、ええ加減お前飽きへんか?言われそうだけど、全く飽きません!恭司さんのギターの音、フレーズ、楽曲が私の感性にドンピシャなのは言うまでもなかろうが、毎回何が飛ぶ出すかわからないびっくり箱なのもこの形式の楽しみでもある。
バンド形態じゃなかなか聴けないオリジナル曲、「まさかこの曲を?」なカバー曲、しまいにはエフェクターのトラブルで曲が変な方に暴走してしまうことさえもプラスに転換してしまう対応力、これは本当に凄いとしか言いようがない。

いつまでも感性が三大ギタリストやジミヘンやリッチーで止まってる中高年も、「今時ギター・ロック?」なんて言ってる若い人も、一度この「弾き語り・弾きまくり」を見たらいいんじゃないかな?ギターという楽器の持つ可能性は無限、それが実感出来ると思う。
今も積極的に新しいことをやってる人…海外ならニール・ショーンやウリ・ジョン・ロートがそうだけど、そういう人は部屋でDVD見てても耳と目が吸い寄せられる感覚があるし、恭司さんは彼らと同年代で同じくいまだ進化し続けてるから、「日本人はダメ」と決めつけて聴かないのは損してると思う。

まだまだ書きたいことはいっぱいあるけど、そろそろ字数制限に引っかかりそうなので別の機会にということで。

余談

終わりが思いのほか早かったのでそこから友人の店に行こうと思ったが、バスの本数が少なくてしかも次のまで時間が空きすぎたから諦めてそのまままっすぐ帰ることに。最終のアーバンライナーにも間に合い、日付が変わるまでには部屋に戻れたんだけど、それにしてもあいつの店の名物料理食べたかったよ。

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こういうやつね。

ということで、今回はここまで。

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