2017年03月

えー、今回はまともなレポになりません。イベントの性質上、いつもみたいにきっちり曲目やらどんなプレイをしてたかという話を書く雰囲気じゃなく、美味しいものを食べたり飲んだりしながら談話を楽しむというものだったので。だからいつもみたいにセトリ走り書きもしなければ記憶もあやふやなので、その辺は切にご容赦下さい。

東京まで出てくるのは、丁度1年前の同じく恭司さんバースデーライブ以来。あの時の会場は川崎のクラブチッタだったけど、ホテルにチェックインするまで上野のHRCでYAZAWAな方々と団欒してたっけな。
そしてクラブチッタでは恭司さんのキャリア総括、ならびに多くのゲストを迎えての華々しいライブだった。完全態ではないとはいえ、それぞれ主要メンバーを擁してBとVとWILD FLAGの曲が一度に聴けるなんて機会、まずないでしょ?しかもアンコールでは光浩さんと厚見さん・元基さんに庄太郎さんが一緒に演奏してんですよ?しかもギター・バトルにはSyuに織田哲郎に佐野史郎って、ほんま「凄い」としか言いようがなかったんだから。

まあ、あの時の超満員のチッタと比べたら今回はこじんまりしたものでございました。

宿は新橋のカプセルにしたんだけど、駅を降りてしばらく歩いたらこんな光景が。

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「ここは新橋の居酒屋じゃないんだから」という、いつぞやの誰かさんのMCを思い出した。
そして宿に荷物を放り込んでしばらく休憩して、会場へ向かった。

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知った顔は3人くらい、でも席が隣り合わせた方々といろいろ楽しく話も出来ました。

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料理はバイキング、なかなか豪華だった。ちなみにこれで終わりでなく、あと2回お代わりしてます(笑)。

今回は主役の恭司さんが数曲演奏した後に各テーブルを回ってお客さんたちと会話をする、というのを3~4回繰り返し、全体としては4部構成(!)になってたんだけど、第1部エレクトリック、第2部アコースティック、第3部ギター・クリニック、第4部で再びエレクトリックという感じだった。
恭司さんが演奏を一区切りして会話を楽しんでる間に映し出されてた旧BOW WOWの83年のライブ映像がなかなかのもんでしてねえ…当時田舎の高校生だった私には生で見ようがなかったんだけど、同じくらいの年齢の方で「この場にいた」という人もいたり、メンバー全員の若々しく勢いに満ちた姿に「おおっ」と思ったり。

あ、第2部アコースティックのコーナーは、いつもの弾き語りコーナーを更にゆるく自由な雰囲気にした感じで、最初から用意してきたであろう曲は頭の2曲だけ、あとはほとんどリクエスト。「WARNING FROM STARDUST」をリクエストしたのは私なんだが、私のリクエストが採用されたのはこれが3回目…「絆FOREVER」に「HEELS OF THE WIND」…やっぱりね、恭司さんの声でBOW WOWの歌を聴きたいってことは、今いかに「B」を聴きたくて仕方ないかってことなんですよ。他にもBのポップ時代の曲をやったり、しまいに西城秀樹の「傷だらけのローラ」って…昔BやVのファンだった人たちの誰が今、山本恭司が西城秀樹を歌うなんて想像してただろう?ちなみに秀樹に関してはちょっと面白い話もあったんだけど、ここでは書けません(笑)。

結局きちんとした構成だったのは最後のインストのコーナーとアンコールくらいか?それでもいつかの某ライブで酔っ払ってグダグダだった連中とは違い、きちんと演奏して心に響く音色を奏でるのはさすが!としか言いようがなかった。

当初3時間くらいを予定してたのがいつの間にか4時間半を超え、結局私が会場を出たのは日付が変わる頃で、宿に戻って風呂入って寝たのが1時前。日頃の疲れが出たのか9時頃まで爆睡してしまって、おかげで大阪に帰り着いたのが遅くなり、いつもならもっと早くに書いてるレポもこんな時間帯で、しかも走り書きになってるわけです。

まあでも、本当に楽しかった。いつもこんな感じでも困るけど(笑)、たまにはいいでしょう。
改めまして恭司さん、61歳おめでとうございます。このまま100歳記念ライブまで健康でいて下さいね。

久しぶりの東京なので、久しぶりの高層ビル。

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まあ、大阪でも市内じゃ珍しくないんだけど、俺んちは田舎で高い建物がないからつい見上げてしまう。

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摩天楼夕景。なかなか綺麗なもんです。

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こんな光景にホッとしてみたり。

田舎もん丸出しやって?
だって田舎もんやし。

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書けるかどうかビミョーだと言いながら、結局書くことになってしまった。まあ、この記念ライブに行っておきながら何も書かないのも期待はずれというか肩透かしという人も多いだろうし、私ももやもやした状態なので、書いてしまえばすっきり出来るだろう。

彼らにはまったのが一昨年秋の「ミュージックフェア」で、それから半年くらいの間に全アルバムを揃え、1月には念願のライブ初体験も済ませた。大阪では初の新春ライブ(フェスティバルホール)という、まあ特別興行なんだが、いつものハード・ロック/ヘヴィ・メタルとは違う、それでいて通じるものもある演出も最低限な「歌と演奏と楽曲で勝負!」な熱いライブに「これぞ本物のロックのライブ!」を強く感じたものだ。
それから10月にも(レポは書いてないが)ZEPP NAMBAでのライブも行き、ストリングスを帯同していないバンド(+サポート・ギター&キーボード)のシンプルなステージングに熱くなったものだ。

そして今回はデビュー30周年記念の初・大阪城ホール。実は私が20年くらい前にはまったGLAYやラルクよりキャリアも長く、それこそBOOWYがある意味唐突な終焉を迎えたのと入れ替わりくらいにデビューしてきたこのバンドが関東では大きな会場で何度もやってるにも関わらず、大阪ではこれが初というのもかなり意外であり、いかに関西を軽視…いや盲点にしていたのかと思ったものだ。

当日私が会場にギリギリの時間に到着してみれば既に多くの観客が来場しており、「ガラガラなんてことはないだろうな」という心配は杞憂だった。相変わらず男女比も半々くらいで、年齢層も幅広い。前にも書いたけど、イケメンなメンバーもいなけりゃオシャレでもないしフロントマンは変人だし(あーあ、言っちゃった)、一般受けしそうな曲も実はその一部であり、他は変な曲の多いこのバンドのライブに来るということは、ファッション感覚だけで音楽を聴いてるのじゃない本当に好きな人たちがこれだけ集まったのだと思ったら嬉しくなった。

そしてほぼ満員の客席に入り、先行予約でチケット取ったのに席が後ろの方やんとぼやく間もなく、WOWOWでの生放送もある関係かほぼ定刻にライブは開始となった。

まず一発目は「ファイティングマン」。いつもは最後の最後に出てくるのに、最初っからこれですよ。デビュー作のオープニングを飾った曲ということで「歴史の総括」の始まりにふさわしい景気の良いスタートとなった。その後も「デーデ」「新しい季節へキミと」「悲しみの果て」と代表曲の数々を畳みかけ、「俺たち最大のヒット曲」とのアナウンスの後に「今宵の月のように」。ライブに来るのが3回目にして初めて生で聴けるこの曲、今となってはそれほど感無量というでもないが、はやり感慨深いものがあった。
なお、3曲目くらいから新春ライブにも帯同していた金原千恵子ストリングスも加わって音に厚みと深みが加わっていた。

それからハードな「戦う男」を挟んで「ふたりの冬」「翳りゆく部屋」「リッスントゥザミュージック」とスローな曲が続き、「風に吹かれて」「ハナウタ~遠い昔からの物語~」「桜の花、舞い上がる道を」というミディアムな曲の連発。オリジナルだけじゃなくベストアルバムにも手を出したりライブで聴いたりして印象に残った曲が続いたからこれは嬉しい。しかも「桜の花~」では文字通りに桜の花びらが舞う演出。シンプルなステージングが身上の彼らにしては珍しい…でも、ここまででも照明はいつもより凝ってたし、やはり大会場となるとこのくらいは必要なのかも。それでも同じ会場での水樹奈々に比べればシンプルこの上ない。まあ、あちらはあちらでいいんだけど、この辺はやっぱり個性やね。

それからは「3210」に続く「RAINBOW」、更にはこれも終盤でおなじみの「ガストロンジャー」。この曲がここで出てくるのも驚きだった。この辺は「ハードなエレカシ」コーナーだろうか?「やさしさ」「四月の風」「ズレてる方がいい」と続き、「俺たちの明日」のラストでは「ドカン!」という音とともに金色の紙テープが発射された。ここで「第1部終了」とのこと。

さてそれから私は一旦トイレ&煙草休憩に出るのだが、程なく中から演奏が聞こえてきたので慌てて席に戻ることに。「奴隷天国」がその曲だったのだが、これは完全なヘヴィ・メタル曲…ギターのリフをはじめハードな演奏に叫ぶヴォーカル、彼らのポップな面しかしらないライトなファンは面食らったことだろう。続く「珍奇男」はもっと面食らう人も多かったかもしれないが、初期からのファンにはそっちの方が普通なはず。
「Under the sky」ではバックのスクリーンに幻想的な映像が映し出され、続く「コールアンドレスポンス」での「全員死刑です」にぶっ飛び、「笑顔の未来へ」で少しほっとしたかと思えば「TEKUMAKUMAYAKON」「so many people」でまたアゲアゲという、なんとまあハチャメチャな構成…しかしそれが可能なのも彼らだからこそ、なのかも。
そして最新シングルとなった「夢を追う旅人」が出て、「花男」が終わった後にメンバーと金原ストリングスが並んで挨拶(だったと思う)、ここで第2部…本編終わりとなった。

それで終わるはずもなく、第3部…いわゆるアンコールへ。「友達がいるのさ」「おはようこんにちは」そして「待つ男」の3連発で全編が本当の本当に終了した。

…しめて3時間、いつもと違った構成ながら私のなじんだ曲はほとんど披露されたし(全31曲!)、非常に満足度は高かった。欲を言えば「愛すべき今日」もやってほしかったが、その辺は言い出せばキリがないからこれでいいとしよう。
MCも最初の方は1曲1曲解説を入れていたが、面倒くさくなったのかだんだん省略されたのもある意味「らしさ」だし、全編通して演出らしい演出と言えば、桜の花びら、紙テープ、スクリーンの映像、そしてやや凝った照明、これだけである。いくら彼らにしては凝ってるとは言え、今時の演出過多なライブに比べればはるかにシンプルであり、その分歌と演奏の力がくっきりと浮き彫りになった。

そう、エレカシ初体験となったフェスティバルホールでは「それほど上手くはないが一体感は凄い」という感想だったのがZEPPでは「熱いパフォーマンス」に変わり、今回は更に音圧の強力さ、そして歌声のパワフルさに圧倒された。フェスティバルホールという会場が山下達郎や井上陽水といった「完成度重視」な人たちに合う場所だからなのか、今回は大会場だからPAもそれに合ったものが使われたからか?いやいや、30年の長きにわたって一度のメンバーチェンジもなく続けてきたからこその一体感、そして細かい部分では粗さはありながらもその声量と心に突き刺さる言葉を繰り出す宮本浩次という危ない…じゃなくて恐るべきフロントマンの存在ゆえだろう。
矢沢永吉、山下達郎、井上陽水といった人たちの歌声を聴いてしまうと大抵の歌い手が貧弱に聞こえてしまう中で彼の歌声はその3人には及ばずながらも聴き劣りはしなかったし、下手すりゃ浜田省吾や氷室京介すら上回っていたかもしれない。

メンバー全員が私と同い年だから、もう若くはないバンドなのだが、このエネルギッシュさは一体何なんだろう?しかも今年は年末まで続く全国ツアーが決まっている。出来ることならもう1回でもいいからどこかの会場で見たいものだが、きっと彼らなら最後までこのテンションを保ちながら熱いステージを展開してくれるだろうと思った。
そしてこれから先も確かなロック…不良っぽいのがカッコいいとされる中で「真面目に勉学してきたけど反骨精神を持った文学青年のロック」という独自のスタイルを貫いて、今時のロックバンドとは名ばかりのフニャフニャした連中を全て葬り去ってほしいと強く思った。

おまけ

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ライブ翌日が発売日、でも当日に会場で先行発売されていた最新ベストアルバム。まあ、大抵のCDショップではフラゲ出来たと思うけど。私はAmazonで買ったから発売当日の到着になったけどね。
これがまた優れものでねえ…2枚組のCDは1枚がポップな曲、もう1枚がハードだったりぶっ飛んだ曲という構成が秀逸。そして初回限定のライブDVDがまた見もの。彼らの歴史を1枚90数分で追って、その変遷を味わえるのが素晴らしい。皆さん是非ともケチらずに初回盤をゲットして頂きたい…もっとてんこ盛りのデラックス盤をゲットしたぞ!という人には勝てないけどね(笑)。

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バトル・フィーバーにアフロディーテ…
まぎらわしい(;一_一)

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「俺、このDVDになってる会場におってんで~」というのがこれだけあります。
本当はもうちょっとあるはずだし、特典映像で各地の様子が少しずつ映ってるのも含めたらここに収まりきれません(笑)。
なにぶん大阪在住なので、関西で撮影のものは12巻中5巻、転勤で関東にいた頃のが3巻、したがって遠征までしたのは4巻のみです。BOW・VOWと矢沢永吉2回(内1回は恭司さん参加)なのが私らしいとこですが。
東京在住だったらこんなもんで済んでないだろうなあ…(^-^;
なお、客席に私の姿を発見出来たものは1つもありませんでした(爆)。

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実は持ってるんです。
ジャズやブルースにはまった後に、やはりロックの元祖も押さえとかなきゃと、プレスリーやエディ・コクランあたりとまとめ買いだったんですが。

偉大なロックンロールの創始者、彼がいなければビートルズもストーンズもジミヘンも、パープルもツェッペリンもクリムゾンもピストルズも、永ちゃんもRCもエレカシも、そしてVOW WOW、テラ・ローザ、ラウドネス、アンセム、陰陽座、ガルネリウス…全てのロック・ミュージシャンがこの世に存在していなかった。若い人はともかく我々世代でもなかなかここまでさかのぼって聴かないと思うけど、やはり原点の確認のために一度は少しでも聴いてみましょうよ。
ボブ・ディランがノーベル文学賞もらった時はにわか知ったかぶりがいっぱい出てきたけど、この人は「(名前くらいしか)知らん」で済まされて、それでもいいじゃんみたいな連中が多い気がする。
でもそれは違うからね。歴史の勉強と同じで、過去を知ることは今を知ること、そして未来を作っていくことなんだから。

とにかくその偉業に感謝、です。長いことお疲れ様でした。

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去年東京で開催され、関西にも巡回展があるかわかんなかったから、いっそライブ予定なしでもこれだけのために上京しようかと思いつつ機会を逃してしまったこちら、幸運にも神戸市立博物館で開催っていうからこれは行かねば!ということに。

まあ、これといった目玉はありません。でもほとんどが日本初上陸というだけあって、見ごたえは十分。
欲を言えばクレタ島の「蛇女神像」があれば目玉になってたのにと思うが、それは欲張りかな?

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♪海の色に染まる~ギリシャのワイン~

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キン消しかよっ!

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「最高に美味いビール飲んで帰ってね~!」
それ違うし(笑)。

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恭司さんのライブは、11月のWILD FLAGに行けなかったから、10月の「弾き語り・弾きまくり」京都公演以来…だから5ヶ月ぶりになる。そして佐野さんとの「小泉八雲」となれば2年半ぶりくらいだ。あの時は神戸の兵庫県公館という建物で開催され、関西周辺から多くの人が集まったものだが、今回は滋賀県、しかもよりによって彦根…去年の奈良での「弾き語り・弾きまくり」で関西は残り2県…滋賀と和歌山を残すのみとなったから、滋賀で恭司さんを見れるというのはありがたかったのだが、それにしても彦根は遠い。1日空いてる日だったら彦根城も見ていこうかと思ったが、午前中は通院だったし今回の会場も城とは方向違いの山の上だったから、こちらだけで精一杯ということになってしまった。まあいい、彦根城は過去2回くらい見てるし、どうせなら竹生島も併せて1日観光にした方がいいかという結論になった。

また無駄話が長くなってきているが、今回の会場である清凉寺、もっと小さな寺を想像してたら意外に立派な寺だった。

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こんな具合に。そもそも井伊家の菩提寺だそうで、今大河ドラマになってる「おんな城主・直虎」もあってある意味タイムリーといえばそうだろう。

私が見るのはこれが3回目の「小泉八雲」だが、過去2回がヤマハ銀座スタジオ、兵庫県公館という新しめの建物でしかも真っ昼間だったから、夜の寺というシチュエーションは初めてだし、語られる場所としてはある意味最もふさわしいと言えるし、それが非常に楽しみだった。
大きなお堂でかなりの人が入るにも関わらず場内は満員。チケットは完売だそうで、今回の注目度も高かったんだなと思った。
テーマは「望郷」で語られる話は神戸の時とほぼ同じ…でも場所・時間帯が全く違うから自然と違った気分で味わえると思ったら期待が高まった。

そしていよいよ開演となるのだが、まずは八雲の曾孫にあたる民俗学者の小泉凡と、今回の主催である滋賀大教授の真鍋晶子による諸々の解説。滋賀大といえばうちの姪っ子が春から通うから(石山キャンパスの方だけど)これまたタイムリーといえばタイムリー。

そしてしばしの休憩をはさみ、いよいよ主役のお二人が登場し、独自の世界を描くこの朗読会は始まった。

まずは八雲が過ごし、佐野・山本コンビの故郷である松江の情景を描いた話から導入され、「水飴を買う女」の話へ。うちの田舎や京都の六波羅をはじめ全国各地に伝わる話だが、まずはこれが会場の雰囲気にぴったりで、神戸の時とは全く違った気持ちで聴けた。
続く「若返りの泉」のユーモラスさで笑いさえ起きたが、続く「日本海に沿って」…「布団の声」と言った方が良いか?これが本当に怖くて、神戸の時ですらゾッとしたのに、今回は場所柄もあって同じ話ながら更にリアルな恐怖感を味わえた。

「停車場にて」の人間ドラマも素晴らしいものだったが、やはりここまで聴いてきて注目されるべきは佐野さんの優れた表現力。ナレーションから登場人物1人1人まで声色や話し方も全く変え、時に淡々と、時に激しく語る様子は、それがあってこそ物語の内容がリアルに伝わるというもの。さすがは幅広い役柄を演じてきた名優だけのことはある。

そしてBGMと効果音をエレクトリック・ギター1本と多少の打ち込みで表現する恭司さん。きちんとした楽曲のみならず、赤子の泣き声や機関車の音といった「音楽でない音」を操る様は、他のギタリストにここまで出来るだろうか?エイドリアン・ブリューが動物の鳴き声をいろいろ出してきたのと通じるものはあるが、あれはある意味「曲芸」だし、それを超越して物語世界に更なる深みを与える、これは恭司さん以外にやったのを聴いたこともなければやれる人も多くないだろう。「TIMELESS」をはじめ数曲フルで、もしくは短縮版が演奏された楽曲もあるが、それらが終わるたびに拍手が起きた。これは素直に物語のアクセントとして深い感動を与えたと解釈して良いだろう。

その後は哲学的な話になり、8つの物語が幕を閉じることになったのだが、この流れに私は上田秋成の「雨月物語」を思い浮かべた。人生訓を盛り込んだ怪談の数々の中にユーモラスな「夢応の鯉魚」や議論メインの「貧福論」を交えた構成がそっくりなのだ。たまたまかもしれないし、日本の古典にも造詣の深い佐野さんだからある程度参考にしたのかもしれないし。ただ、バラエティに富んだ物語の数々に一貫性を持たせるとなれば、やはり通じる部分は出てくるのかもしれない。それが日本の伝統というものだろう。
同じ怪談集でも中国の「聊斎志異」と比べてみたら良い。あちらはいろんな怖い話、不思議な話がとっ散らかって収録されただけだし、人生訓が織り込まれた話も多くないが、「雨月物語」といい今回のこちらといい、明らかにただ怖いだけではない「もっと深いもの」を感じ取れるのだ。

それに、明治の文明開化で西欧化を進める中で日本の伝統美を排除する動きがあったが(廃仏毀釈とかね)、八雲は外国人でありながら「日本にはこんなに素晴らしい物語が多くある。それを残していかなければならない」として多くの怪談・奇談を伝え残していくための行動を起こした。ウリ・ジョン・ロートも来日時に「日本には素晴らしい伝統文化があるのに、なぜ若者たちは文化など持たないアメリカの真似をしたがるのか」と不思議がったそうだが、そういうことは第三者の視線で見た方が再認識出来るのかもしれない。

そしてここで繰り広げられたのは、語り・音楽・場所が見事に融合した高度な芸術であり、これぞ言葉通りの意味のプログレッシブ・ロック、そして(大人の)ファンタジー・ロックと言えるものだろう。

とりあえず本編で語られるべきものが終わった後は2人のくだけた話で場を和ませたが、その後アンコールとも言える、彦根にちなんだ話としてもう1つ「果心居士の話」が語られた。大和では松永久秀や筒井順慶、近江や都では織田信長や明智光秀を手玉に取ったことで名高い幻術師だが、もちろん今回は後者のエピソード。知ってる人は知ってる話の組み合わせだったが、改めて佐野さんの高度な話術が味わえ、すっかりその世界に惹き込まれた。

全てが終わって現実に戻った私は、なんせ遠いものだからまっすぐ帰途に就いたが、いつもの恭司さんのライブとはまた違った心地良い疲労感を味わっていた。おかげで新快速の中で寝過ごし、尼崎まで行ってしまってたのだが(笑)。

それにしても、毎回違ったテーマだったり、同じ内容でも場所によって全く違った感覚を味わえるこの朗読会、「1回見たらいいや」ではなくまた見たくなってしまう。次がいつになるのかはわからないが、京都の下鴨神社でもやったことだし、次は奈良の寺でやってもらえないか?を期待している。関西は寺社や史跡の宝庫だからね。是非今後の課題として考えて頂きたい。

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