2012年06月

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 土曜のレポを今頃書きます。日曜の朝はひたすら寝てたし、夜はキノコホテルのライブ、昨日は仕事が遅くなったから。

 先日のUKの余韻がまだ頭に残ったまま、なんばHatchと同じ敷地内のS.O.Ra.という店が会場なので、そちらに向かった。30人も入れば満員になるような小さな店。前日の京都が都雅都雅で、翌日の神戸がチキンジョージ。なぜ土曜の大阪が一番小さなハコ?おかげでチケットは早々と完売。早々と買って良かった…

 某・レオさんとか某・島田さんとか、見たような顔もちらほら。観客の年齢層は(やっぱり)高い。実は、開店前にドアから中を覗けば、恭司さんの姿が既に見えてたのよね。

 定刻の7時半を10分くらい回ってから主役の2人が登場。天野SHOさんは初めて観る人だが、元々はハード・ロックの人らしい。そんな人がベース1本持って出てきて、恭司さんもいつものギターとアコギを1本。
 まずは2人で…知らん曲。恭司さんがアコギ弾きながら歌ってた。続いて恭司さんがいつものギターに持ち替えて「LITTLE WING」。この曲も何回聴いたかなあ…でも、ドラム無しでというのがちょっと新鮮だったかも。次は2人が単独で歌うコーナーを順番にということで、どっちが先にやるかはジャンケンで決めるということになったのだが…果てしなく「あいこ」が続いてキリが無いのでとりあえず次の曲に。恭司さんが再びアコギに持ち替え、SHOさんの歌う曲だった。次のジャンケンでようやく決着がつき、SHOさんが先発ということに。

 で、結局7曲歌ったのかな?ビートルズで有名な「Mr. MOONLIGHT」とかエリック・クラプトンの「WONDERFUL TONIGHT」とかを歌ったんだが…ベース1本で弾き語りする人って、初めて観たかも。なんだ、「はなわ」と一緒かなんて言っちゃいけません。ベースってリズム楽器としての役割を果たすことが多いんだけど、時に美しく時に激しくメロディを奏でる様子に、この楽器の奥深さを知らされた気がした。

 ここまでで結構な時間が経ってたから一旦休憩かと思いきや、そのまま恭司さんコーナーへ。今回はずっとアコギ1本で、「I'LL WAIT A LIFETIME」「極楽トンボ」「選択」「風のように生きる歌」そしてT-REXの「20th CENTURY BOY」…とまあ、既に聴いた曲ばかり。次は珍しく「AMAZING GRACE」を歌入りで披露。これがまた味わいがあって良かった。で、ルイ・アームストロングの「WHAT A WONDERFUL WORLD」…これもお馴染みなんだけど、次がBOW WOWの「ROCK'N'ROLL DRIVE」!2ndアルバム「SIGNAL FIRE」収録曲で光浩さんの作曲、ライブでも光浩さんが歌ってるんだが、アルバムでは恭司さんが歌ったみたいだから別にここで歌うのは構わないんだろう。でも、何だかレアなものが聴けたなあ…終盤は「THEME OF BOW WOW」の掛け合いになって、恭司さんコーナーは終了した。

 そして2人に戻って「KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR」「HAVE YOU EVER LOVED A WOMAN?」を続けて2人で歌った。何だかクラプトン関係の曲が多いなあ。

 さて、続いては意外なゲストが紹介された。それは…

山本真央樹!

 はい、恭司さんの息子さんで、ドラムの腕にかなりの評価がされてる若者(そうか、もう「少年」じゃないんだね)です。

 ステージが狭くてドラムセット置くスペースが無いからカフォンを叩くことになったんだけど、クリームの「CROSSROADS」、そしてBBAの「SUPERSTITION」で親父さんとバトルを繰り広げる様子は、楽しそうでもあり白熱してもおり、なかなかに観応えがあった。しかし、手のひらが痛そう…

 ここで真央樹君は退場、つっても数メートル先の席に戻っただけなんだけど、時間が無いから恭司さんたちもステージを降りずにそのままアンコールへ、ということで再びBBAの「SWEET SWEET SURRENDER」。これで約3時間近いステージは終了した。

 私はビール2杯飲んだから、きっと途中でトイレに中座するだろうなと思ってたけど、夏だからかそれも無く、ずっと2人(+途中もう1人)の演奏に聴き入っていた。
 あ、よく考えたら恭司さんは今回1曲を除いて全部アコギだったやん。でもねえ、この人のアコギもやっぱりいいんですよ。アコギとベースだけでこれだけ深みのある演奏を聴かせてくれるってのもあんまり無いし、UKみたいな凄い緊張感ってのは無かったけど、まったりした雰囲気に浸れたのは別の意味で良かった。まあ、あっちにはギターいないしこっちにはキーボードいないから単純に比較も出来ないけど。

 恭司さんのライブにしては、今回は随分あっさりなレポだなあ…まあ、ちょっと前にUK観て固まって、翌日のキノコホテルではマリアンヌ東雲の激しいオルガンとの格闘に驚かされたもんだから、その間でちょっと一息、みたいな感じになったのは否定出来ないか。でも、やっぱり名手2人だから「箸休め」にはならなかったのはさすがと言うしかない。

 でも、今年になってから佐野史郎の朗読のバック演奏に「弾き語り・弾きまくり」そしてこれだから、そろそろハードな恭司さんも聴きたいな…出来ればBOWWOWで関西に来てほしいんだけど。せめて安達久美or西野やすしとのセッションをやってくれたらね。

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 さーさお待たせしました!書こうかどうしようか迷ってたけど、やっぱり書かないわけにはいかんでしょう、のUK!今回は、というかいつもだけど、いつも以上にハチャメチャな内容にあるであろうことはお許し下さい。だってね~、あんまり凄過ぎて「ぐうの音」も出ないくらいだったんだから、マジで。

 そもそも、今回は元々行く予定ではなかった。平日だしどうせすぐ完売だろうし(実際そうなった)、行った人の「凄かった」って話が聞ければ(読めれば)いいやなんて思ってたんだが…
 ライブの開催が近づいたある日、某マイミクさんが「チケット2枚余ってます。どなたか欲しい人いませんか?」という案内をしているのを見つけ、その時は「でもすぐ飛びつく人おるんやろね」と諦めていたのだが…
 直前になっても「引き取り手が決まりました」とかいうことも書いてない。で、当日まであと4日となった時、なぜか私の中で「これはひょっとしたら行くべきかも?」という気持ちが大きくなり、もう1人「ひょっとしたら食いつくかも?でもチケット代高いし(¥9500)、どうだろうな~」と思い当たる人物が頭の中に浮上。そしてメールしてみたら、「行きたい!しかし高い!…ちょっと考えさせて」という返事。そして翌日「やっぱり行く!」と最終的な返事が来て、案内していた人に連絡してみたら、翌日には「どうぞいらっしゃいませ」との回答が!というわけで、我々は喜び勇んでライブに行けることになったのだった。

 今回のメンバーは、ジョン・ウェットン(Ba.&Vo.)とエディ・ジョブソン(Key.)に加えてテリー・ボジオ(Dr.)という、79年のアルバム「DANGER MONEY」を制作、そのまま来日してライブアルバムまで出した顔ぶれ。前回来日時は過去に在籍しなかったギタリストとドラマーを迎えてだったのだが、過去に在籍した超絶ドラマーを迎えてとなったら、期待するなと言う方が無理でしょ。私は「名盤」と呼ばれてる1stアルバムのビル・ブラッフォード(Dr.)&アラン・ホールズワース(Gt.)との組み合わせよりこっちの方が凄かったと思ってるんで。同じように思ってる人も多いことだろう。

 さて、私は前日から「明日は仕事終わったら医者の予約があるので」と(またもや)大嘘こいて終業後にすっ飛んで帰る準備万端にしていたのだが…

 御存知の通り、当日は台風が接近して天候は最悪で、会社から駅までの間に私の傘は突風で骨折、傘をさしてたら鬱陶しいことになるからとささないまま濡れ鼠になって駅に到着。電車動くんかな~と心配してたが、少し遅れながらも無事に動いており、どうにかこうにか難波まで到着出来たのだった。
 駅で同行者from和歌山と合流、なんばHatchで今回チケット余ってる旨を案内頂いたマイミクさんともお会い出来、ようやくここでチケットを手にしたのだが…

何と、最前列!

 こりゃまた奇蹟続きで、ほんまに俺この後大丈夫かいな?と心配にさえなってしまった。でもまあ、傘の骨折がその代償と思えばちょろいもんだ。

 開演時間も迫ってきたので席に着いたが、ほんまに真ん前。丁度、ジョブソンの前あたりかな?という位置。で、私の席の後方には某・板倉さんや某・宇都宮さん、某・筒井さんといった著名人のお姿も見かけた。

 そんでですねえ、ステージは暗幕で閉ざされてたんだけど、その下の方からボジオのドラムセットが少しだけ見えてたんですよね~。既にいろんなとこでその全貌は知ってたんだけど…

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 こんな感じ。どうですか、この無茶苦茶なセッティングは。こんなに並べて、全部叩けるん?

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 こんな具合に、腕6本・脚6本無かったら叩けないでしょと思ってしまった(念のため、この写真は大威徳明王という仏様)。

 そうこうしてる内に、いよいよ開演時間となった。場内からは「UK!UK!」コールが起こり、それが10分少し続いた後にようやく暗転、幕が開いてまずはジョブソンが、続いてボジオが登場。腕2本の脚2本、普通の人間で良かった…(当たり前だっつーの)そして最後にウェットンが登場、全員が定位置について演奏が始まった。

 まずは「ALASKA」から始まって、「NIGHT AFTER NIGHT」へと続く。「NOTHING TO LOSE」は好きな曲だからここで「おおっ」と思い、その後は「THIRTY YEARS」「RENDEZVOUS 6:02」「CARRYING NO CROSS」と続いた…はず。スタジオアルバムは2枚とも持ってるんだけど、難しい曲が多くて全部覚えきれなかったので、曲目は川崎の方と同じだろうと思ってそれをそのまま書き写してます(実際その通りだったみたいだけど)。
 ジョブソンのキーボード&バイオリンのソロ、ボジオのドラムソロと続いて、ジョブソンのピアノのみをバックにウェットンが歌う「AS LONG AS YOU WANT ME HERE」の後は3人に戻って「DANGER MONEY」、そして「IN THE DEAD OF NIGHT」「BY THE LIGHT OF DAY」「PRESTO VIVACE」の三部作で本編は終了。

 最後の三部作あたりで場内は総立ち、アンコールの拍手に応えて3人が再び登場。「CAESAR'S PALACE BLUES」「THE ONLY THING SHE NEEDS」の2曲でアンコールは終了、これで全編が終わった。締めて2時間丁度くらい。

 …さて、ライブ本編の話がえらい駆け足やないかい?と思う人も多いでしょう。これにはちゃんと理由があるんです。

 もうね~、どの曲でどうだったかなんて関係ないくらい凄かったというか、「凄い」を通り越して「とんでもない」としか言いようのないものだったんで、その辺をじっくり書いていきたいと。そのために本編の内容は端折ったんです。

エディ・ジョブソン

 ボジオの変態かキチ○イとしか思えないドラムセットと対照的に、こちらはわずか2台のこじんまりしたセッティング。しかし、それを補って余りあるというか、「この人も変態かキチ○イだ」としか思えない、マジでとんでもないテクニックの嵐。とにかく、指の動きの速さと言ったらもう、ビデオを3倍速くらいで観てるんちゃうかと思うくらい。あんまり速すぎて、指そのものよりも残像しか見えへんといった感じだった。おまけにいろんな多彩な音色を出してるし。
 更に、バイオリンの腕も凄くって、キーボードとは全く構造も違うのに、よくここまで両方を見事に弾きこなすもんだと、ひたすら感心したものだった。

 考えてみれば私は、ジョン・ロードもキース・エマーソンもリック・ウェイクマンもライブでは観てないなあ…もう皆さん、昔みたいな凄さを期待するのは難しかろうし、ほぼ引退してる人もいるし。しかし、彼らよりまだ若いとは言えジョブソンももう57歳。それなのにこの超絶技巧は一体何なんですか?今まで数々のキーボード奏者を観てきたとはいえ、ここまでとんでもない演奏を目にしたのは例が無かった。永川さんがUKの曲を演奏して苦戦してた様子の伺えたのがわかった気がした。

テリー・ボジオ

 そして大威徳明王、じゃなくて「これほんまに全部叩くの?」というくらいの変態チックなセットに囲まれたこの人、ほんまに全部叩いたのかどうかは目で追い切れなかったが、とにかくこの人もそのテクニックの凄まじいこと。序盤こそ、音色に熱気があんまり感じられないと思ったがそれも束の間、複雑なリズムの曲を難なく叩きこなし、次第に熱のこもってくる様子がはっきり伺えた。そしてドラムソロはもう、たった2本の腕と2本の脚でよくここまで叩けるもんだといった凄まじいプレイに、ひたすら呆気にとられた。ドラムソロ、かれこれ10分くらいやってたんじゃない?それでも全く飽きさせずというか、ずっとそちらに釘付けにさせたこの人、やっぱり只者じゃないわー。ありゃもう、打楽器の域を完全に超えてるな。

 私はコージー・パウエルもジェフ・ポーカロも生きてる間には観れなかったし、イアン・ペイスももうあんまり期待出来ないし…というわけで、外国人限定だったら生で観た一番凄い人はヴィニー・アピスだと思ってたけど、確かに音色はヴィニーの方が好みなんだけど、もう「これまでで観たドラマーではボジオが最強!」と思いましたよ、マジで。しかも今年62歳なんですよ。○○○・○を「日本のテリー・ボジオ」とか言ってる人、実際ボジオを生で観たら2度とそんなこと言えなくなると思いますぜ。

ジョン・ウェットン

 昔より太ったのはいろんな雑誌の写真で知ってたし、歌声も昔より衰えたと聞いてたからあんまり期待してなかったけど、期待してなかった分、「案外イケてるやん」と思った。元々、ハイトーンや声量で圧倒するタイプじゃないし、優しく気品のある歌声は十分魅力的だった。
 
 でも…両サイドのジョブソンとボジオが凄過ぎて、この人がすっかりかすんでしまってたように思ったよ。「ウェットンの歌声が大好き!あの声に浸りたい!」という人、エイジアのライブに行った方がいいと思います(笑)。

 …ほんま、これがたった3人で出してる音ですかい?ってくらいに重厚だったし、あの複雑な曲の数々をよくあれだけ一糸乱れずに演奏できるもんだと思った。私は他のライブだったら、「凄かった」と思うのは、聴いてて胸が熱くなるとか、歌声や楽器の音色にゾクゾクくるとかいうケースがほとんどなんだけど、今回はそれすら超越して、ただもうひたすら呆気にとられて固まってた状態だった。誇張抜きでステージからほとんど目が離せず(実際、MCの間以外は一瞬たりとも客席等に目の向くことが無かったと思う)、時間が止まっていたかのような感覚を味わったんだから。

 今年になって観たライブで最高だったであろうことは言うまでも無く、過去20余年の300数十回の中でも屈指の凄さだった。だから逆に心配なんです。当分、どんなライブ観ても感激出来なくなってしまうんじゃないかってことが…

 終演後は雨も小降りになっていて、皆さんが無事に帰れたようで、私も遅くはなったけど翌日はいつも通り出勤出来た。が…やっぱりまだこの日の余韻は今も続いてしまってる。ほんま、とんでもないものを観てしまったよ。迷ってたけど、行って良かった。

 ※最後に…このとんでもないライブを観れる機会を下さったVoyagerさん、本当にありがとうございました。きっとこうなることも何かの御縁だったのかと思います。生涯の思い出として深く心に刻んでおきます。

 昨年10月から8ヶ月に渡って書き続けてきたこのシリーズですが、昨日の記事で一旦終了とさせて頂きます。

 昨年初頭にBOW WOWの長いこと廃盤だった作品の数々がようやくCD化も実現、私が以前から構想していたアルバム・レビューに取り掛かれる条件が揃ったということで始めたんだけど(それでもいろいろあって開始は10月になった)、当初は半年くらいの予定で考えておりました。で、オリジナルBのあたりではほぼ連日のように書き続け、結構速いペースで進みそうだなと思ってたんですが…

 御存知の通り、実家の父の食道癌が発覚してから大阪と田舎の病院を往復する日々が続き、それに伴って私の体調もすぐれないことが多く、Vの諸作品あたりでは週1くらいにまでペースダウンしておりました。

 それ以外にも、最初の方はアルバムを1度通して聴いて内容を吟味、そしてもう1度流しながら勢いづけて書いていくという感じで進めてたから連日or1日置きくらいで書けてたけど、だんだんアルバムの内容を詳しく伝えようという意思が働き、通して聴く回数も増えて、内容がどんどんくどくなっていったのは皆さん読んでおわかりの通り。
 それに、動画は貼り付けずに文章だけで表現しようって最初から決めてたから、如何に文章だけで内容まで想像出来るものになるか、推敲を重ねたことで時間もかかったようです。

 更に!山本恭司・厚見玲衣・人見元基のフル参加or主要な曲に参加した作品はほぼ制覇したつもりでいたけど、調べてみたらまだまだかなりの参加作品が漏れていたことがわかり、体調不良で年末年始のライブ予定全てボツになったのをいいことに?その金をそれらの作品の購入資金に充てたわけで…でも、そのおかげでいろんな面白い作品に触れることが出来て、それらを紹介することが出来たのは良かったんじゃないかと思ってます。

 このシリーズのために各作品を聴くにあたって、ハードな音楽が多いからこっちも体力勝負だなあと思ってたら、皆さんが実に多様なジャンルの作品に参加していることがわかり、改めてその音楽性の幅広さに驚かされたものでした。きっかけは彼らが参加してるからという理由であっても、アコースティック・ギターのみのオムニバスとか、思いっ切りデジタル・ビートなものやジャズにまでその範囲は及び…おかげで、気分転換のために違う音楽もたまには聴こうということも思いのほか少なく、書いてる本人が飽きることなく最後まで書き続けられたのも良かったと思います。

 そして…「元基さんが出てない時に彼の話はしないで下さい」と最初に断り書きしたおかげで、見事に閑古鳥が鳴いてしまい、まーコメントの少ないこと。それでも私は全く気にしておりません。「今回の主役は恭司さんor玲衣さんなのに、何でここにいない元基さんの話?」となる方がよっぽど精神衛生上良くないので、かえって良かったのではないかと。
 主役が矢沢永吉とか下山武徳とかの場合に、参加したB・V関係者のことに触れずに主役についてのコメントのみって場合は全く構わないんですよ。主役である人のこともその都度出来るだけ研究してみたし(永ちゃんは昔からファンだから改めて研究の必要も無かったけど)、それらの人たちのファンが読んでも楽しめる内容にしてみたつもりですから。そうは言っても、遠藤賢司の時は難しかったなあ…

 作品の紹介のみならず、各メンバーやバンドの動きも挟み込んだので、結局全編通してみたら壮大なストーリーを展開してしまいましたが、それでもまだまだ多くの欠落した部分が存在します。
 恭司さん・玲衣さん・元基さんのセッション参加作品で現在廃盤のもののみならず、光浩さんのARB、新美さんのスラット・バンクス等、今の時点で入手出来ない作品も多くあるので、それらが再発等で手に入れば改めて書いてみたいと思います。
 
 そんなわけで、これが完全な終わりというわけではなく、まだまだ気が向いたら入手出来た作品を紹介していきたいと思いますので、その時は気軽に?お付き合い下さい。

 コメント下さった方、そしてコメントは無くても(こっそり)熟読下さった皆さん、どうもありがとうございました。これにて一旦「中締め」とさせて頂きます。

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① 死ぬこととみつけたり/GARGOYLE
② FOOL FOR YOUR LOVING/小野正利
③ ALL NIGHT LONG/小野正利
④ IMAGINARY/JENNY FOX
⑤ STRAGGLE FOR THE FREEDOM FLAG/GALNERYUS
⑥ TEARS OF LOVE/ACTION!因数分解
⑦ MY LOVE/RAJAS
⑧ PRECIOUS TIME/RAJAS
⑨ 廃墟/NOVELA
⑩ フェアウェル/NOVELA
⑪ SILVER LIGHTNING/山本恭司&H.R.S. SPECIAL BAND
⑫ SIGNAL FIRE/山本恭司&H.R.S. SPECIAL BAND


~⑪⑫MEMBERS~

山本恭司:Guitars,Vocals(⑪)
湯川トーベン:Bass
Yoshi Shimada:Drums
Syu:Guitars(⑪)
佐藤圭一:Guitars(⑫)
永川敏郎:Keyboards(⑪)


 時間をさかのぼっての補足パート2は、04年1月になんばHatchで開催された「HARD ROCK SUMMIT」大阪編・第2弾の2日分を編集して6月に発売されたもの。

 これを買うのを躊躇してたのは、メイキングDVD付属で5000円という値段の高さが理由だった。これは当初、「初回盤限定」という触れ込みだったから、それが売り切れてDVDの付かない「通常盤」が普通の値段で出るのを待ってたからなのだが、そうならない内に市場から消えてしまい、最近ネットショッピングでほぼ定価の新品を発見したので「高いけどしゃあないか」と購入を決意した…というわけ。

 今回は、このイベントが始まった当初からのテーマである「新旧の融合」が更に推し進められた形になっており、①のガーゴイル(彼ら自体のキャリアは長いが)とか④のJENNY FOX(メンバー全員女性)、⑤のガルネリウス(ヴォーカルはYAMA-B)といった新しめのバンドが目立つ。そして、②③はそのバックを永川さんと大村孝佳(Gt.)にSPIRAL FIREというバンドが務めており、なぜかクレジットは②のみが「小野正利 with 永川敏郎,大村孝佳 & SPIRAL FIRE」になってるが、③も同じメンバー。なので私は、小野さんのみの名義に統一させて頂いた(笑)。
 
 今回初見参のバンドたちによる①④⑤はとても勢いが感じられるし、以前レインボーの「I SURRENDER」を歌った小野さんは、今回はホワイトスネイクの②、再びレインボーの③を歌っている。ただ、元を野太い声のデヴィッド・カヴァーデイルが歌った②もダミ声ハイトーンのグラハム・ボネットが歌った③も「声質の違い」という点では違和感を覚えるが、クリーンなハイトーンで歌われたこれらの曲も原曲と違った味わいがあって良い。ただ、B'zの松本孝弘のアルバムでもそうだったんだが、②のアレンジがスティーヴ・ヴァイの弾いたバージョンを元にしてるのが惜しい。私は最初の80年バージョンが好きなのに…若い大村のギターのテクニックを前面に出すにはこうするのが良かったのかも知れないが…原曲通りの少ない音数では味わいを出せなかったのだろうか?この辺をベテラン速弾きギタリストの横関敦が「大村は音楽学校で作られたギタリスト」と評しているのだが、そんなん言ったら恭司さんだって元はそうだし、今ならD_DRIVEだって学校の講師と教え子の集まりだけど、皆さんそれぞれ情感や熱気はたっぷり感じさせてるし、学校で音楽理論等を学んだ人でもそうでない人でも、その辺は本人次第だと思うんだけどねえ…

 ⑥のACTION!因数分解は、ベースが大谷慶一でギターがTakechiyoと、この時点でのバンド本体の編成を基本にしてるのが以前と違うところ。
 ⑦⑧のラジャスは、ギターの後藤明博が抜けて鍋島圭一が加わっているが、⑦で昔の曲をやりながらも⑧が新曲というのがミソ。この辺は「現在進行形のバンド」になったことをアピールしたかったんだろう。センちゃん(森川邦子)のヴォーカルも、以前と比べたらよく出ているように思う。ただ、現在はアッくん(後藤)が復帰して山本好一(Gt.)&ノンちゃん(河内倫子。Ba.)が抜けてるのは、両者の間に何かがあったのか…?
 ⑨⑩のノヴェラは、前年までの時点ではドラムのみサポートだったが、今回はオリジナル・メンバーの秋田鋭次郎が復帰している。これでセカンド・ギタリストの山根基継以外の第1期メンバーが揃ったことになる。

 さて、いよいよ恭司さんを中心にしたスペシャル・バンドなんだけど、⑪は以前にも収録された曲ながら、その時は大谷令文が務めてた光浩さん役をSyuが担当、おまけに永川さんもバッキングのみながら加わっている。恭司さんとSyuという新旧テクニシャンのバトルは、2人の個性がまるで違うのでどっちがどっちを弾いてるのかまるわかりだが、当時のSyuはまだ20代前半だったのに、その速い上に熱のこもったプレイで臆することなく見事に応戦している。この辺が後に他の同年代のギタリストと比べて頭一つ抜けた存在になることを暗示しているように思える。実際、この時に恭司さんはSyuのことを気に入ったようで、その後も現在に至るまでプライベートでも親交が続き、各種セッション・アルバムに彼を呼ぶことの多くなったのが理解出来る。
 ⑫で恭司さんとバトルを展開している佐藤圭一という人は知らないが、彼も結構いい感じで張り合っている。

 …とまあ、前年までのライブアルバムと比べても遜色の無い面白いものに仕上がっているが、今回はちょっと編集が杜撰な気がする。曲の前にMCが中途半端に入ってる曲があったり、次の曲の最初の部分が少しだけ出てきてすぐフェイドアウト…という場面のあるのが気になる。でも、MCはそれぞれ入れるべき意味のあるものだから、そう文句を言う筋合いではないのかも知れない。
 ついでに、今回はラストに出演者全員による「STARS」も入ってないし…この辺は、「今までさんざん入れたからもういいだろう」ということなのかな?

 なお、今回は永川さんの出番が非常に多く、ノヴェラの⑨⑩のみならず、②③④のサポート、そして⑪と、実に半数の曲に参加している。編集したらたまたまそうなっただけだと思うが、主催者である恭司さん以上に目立っているというのが面白いと言うか何と言うか…

 で、この年の7/31~8/1にかけて東京でも同イベントは開催されたが、2日目に恭司さんが過労もしくは熱中症でダウンし、彼が不在のまま進められたらしい。結局、それが現時点での「HARD ROCK SUMMIT」最後の開催となってしまった。

 さて、高い金を払わせてまで添付されたDVDなんだけど、これは当日の舞台裏を小野さんのナレーションで案内するというもので、開演前の緊張感と小野さんのまったり口調の組み合わせが面白く、意外に楽しめた。しかし、やっぱりあの内容でプラス2000円は高い。せめてもう1000円は安くすべきだったと思う。


 …以上で本作の解説もおしまい。つまり、このシリーズ全編終了となるわけですよ。あー、長かったけど何だか万感の思いがこみ上げる…
 ここで「シリーズ終了。ありがとうございました」と言っても読んでくれる人も少ないだろうし、シリーズ開始前の案内でわざわざそのために1記事使ってるんだから、最後の挨拶にも1記事使わせて頂こうと思います。それはまた改めて。

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① ビッグ・プロローグ
② サイボーグ戦士ベガ
③ サディスティック・サイキック・タイガー
④ ムーンライト・セレナーデ

⑤ スーパー・バロック・プリンセス
⑥ 太陽の戦士
⑦ ベアトリスの釵
⑧ ビッグ・インタルード


難波弘之:Keyboards
厚見麗:Keyboards,Vocals(⑦)
そうる透:Drums
小室和之:Bass(②⑦⑧),Vocals(②③)

兼崎順一:Trumpet(⑧)
武田和美:Trumpet(⑧)


 前回で一応、山本恭司参加の最新作まで行ったので、バンドや個人の歴史に沿ったストーリーはおしまいなんだけど、本来解説すべき時に持ってなくて、その後に入手した作品を紹介…ってことで、まずはドーンとさかのぼって84年発表の本作を。

 元々「センス・オブ・ワンダー」というバンドは、難波弘之が自身のソロアルバムに参加したメンバーで結成したものなのだが、アルバムは長いこと「難波弘之」名義で発表されていた。79年発表の1stソロのタイトルが「SENSE OF WONDER」で、この作品には彼が前年からライブやレコーディングでバックに参加し始めた山下達郎からの提供曲「夏への扉」も収録されている。この曲は難波さんが歌っているのだが、翌年に達郎自身のアルバム「RIDE ON TIME」でセルフカバーされ、達郎にとっても代表曲の1つになるのは多くの方が御存知の通り。で、この1stアルバムは難波さんがSF作家であることも相まって、海外SFの名作をモチーフにした曲が多く収録されており、「夏への扉」もロバート・ハインラインの作品が元になっている(作詞は吉田美奈子)。
 で、よくあるパターンなら1stソロアルバムのタイトルをバンド名にした場合、次作からはバンド名義でアルバム発表となりそうなものだが、難波さんはなかなかそうせず、84年になって発表された本作と「グリーン・レクイエム」でようやくバンドとしてアルバム発表、となるのだった。但し、いずれも小説や漫画のイメージ・アルバムで、ジャケットにバンド名は表記されていない。正式にバンド名義でのアルバムが出るのは、80年代も後半になってからだった。

 さて、本作は平井和正原作の長編SF「真幻魔大戦」のイメージ・アルバムだが、これは前年に角川のアニメ映画「幻魔大戦」が公開され、その音楽をキース・エマーソンが手掛けたことの影響が大きいらしい。
 元々「幻魔大戦」シリーズは、石森章太郎(後に「石ノ森」と改名)が作画を担当する漫画の原作を平井さんが手掛け(「北斗の拳」が作・武論尊、画・原哲夫なのと同じパターン)、その原作を元に発展させたもので、小説としては「新幻魔大戦」がまず発表され、その後に「幻魔大戦」(これは漫画のノベライズ…だったんだけどだんだん脱線していった)そして「真幻魔大戦」という流れになり、実際に物語の世界も「新幻魔」で起きた出来事が発展して「幻魔」「真幻魔」という2つのパラレルワールドへつながるというもので、読む順番も「新幻魔」→「幻魔」→「真幻魔」と進めるのが妥当とされる。ただ、この作者の悪い癖で、どの作品も中途半端で未完のまま終わっており(後に続編「ハルマゲドンの少女」等が書かれたらしいが詳細は知らん)、それが非常に歯痒いところ。その上、(これは何度も書いたが)「新幻魔」では話がスリリングに進んでいたのに、続く2作品では途端にそのテンポが悪くなり、ダラダラとした文章で読んでて退屈な作品になってしまったのも残念。これは作者が何やら宗教的なものに傾倒し始め、作品にその影響が出てしまったことも大きいようで、特に「幻魔」は宗教色の強い内容で、読みながら「早く終われ~」と、途中からはあんまり真剣に読んでなかった記憶がある。何せ、「新幻魔」は文庫本で1巻だけだったのに「幻魔」「真幻魔」ともに20巻前後(但し1巻あたりの分量は少ないが)もそんな調子で話が進むというか進まないのだから、これは苦痛以外の何物でもない。なので、「幻魔」「真幻魔」ともにその内容はほとんど覚えていない。

 だから…あの退屈な「幻魔」を1本の映画に出来たことも奇蹟なら、「真幻魔」のイメージ・アルバムがこうした形で発表されたのも奇蹟と言うべきだろう。特に、今回紹介の「真幻魔大戦」は、よくあんなダラダラした話をここまで要約して格好いいアルバムに仕上げたものだと感心するばかりだ。

 さてさて、いよいよここで玲衣さんの話に移るが…
 彼は(まだ当時の芸名は「厚見麗」)自らのバンドであるムーン・ダンサー、続くタキオンが解散した後は様々なセッション活動をしており、その中にBOW WOWのシングル「絆FOREVER」のレコーディング、同時期のツアーへのサポート参加があった。で、当時予定されていたBの新作にも参加するものと思われていたが、そこで起きたセカンド・ギタリスト斉藤光浩の脱退。ここでBの10作目は幻に終わってしまうが、B以前にレコーディングに参加したNOIZのヴォーカリスト・人見元基を恭司さんに紹介したのは以前書いた通り。ここで玲衣さん自身も恭司さんから新生Bへの参加を打診されるが、玲衣さんは一旦その話を断っている。それは難波さんからの呼び掛けでSOWに加入して本作の制作に取り掛かっており、そちらの正式メンバー扱いになっていたからだと思われる。今の時代ならバンド掛け持ちは珍しくないので両方に在籍することも不可能ではないだろうが、当時は1つのバンドに専念するのが美徳と考えられていた時代。なので、あくまで新生Bの方には引き続きサポートとして参加するのだが、恭司さんや新美さんの持ってきた曲が元基さんのヴォーカルで凄いものになっていくのに手応えを感じ、玲衣さん自身も曲を提供するに至って、「これはこのバンドに本腰を入れるべきだ」と思ったのだろう。そしてほぼ同時期に進んでいたSOWのアルバムが完成した後に玲衣さんはそちらを脱退、新生Bへ正式加入し、BはVへと綴りを変えて、VOW WOWへと生まれ変わることになった…というのも既に書いた通り。

 というわけで、結果的に玲衣さんの参加したSOWのアルバムは本作のみになるのだが、これが実に優れた作品なので聴き逃すことは出来ない。
 それではお待たせしました、本作各曲の解説に移ります。

 まずは2人のキーボードが思う存分活躍する壮大な①で幕を開ける。アルバムのブックレットには両者の使用機材に関しても詳しく書いてあるが、私にはどっちがどっちを弾いてるのか音色では判別出来ない。しかし、全編通して緩急の対比の効いているのが素晴らしい。
 ②はテンポ良く始まるがすぐに変拍子の嵐となり、再びアップテンポに戻ってその後静かになり、曲の開始2分半を過ぎたあたりでようやく歌が始まる。小室さんのソフトなハイトーンが魅力的。終盤の玲衣さんによるモーグのソロがまた格好いいんだ。
 ③は難波さんがギターの音をシンセで出したハードな曲で、玲衣さんはシンセ・ベースを弾き、小室さんはヴォーカルのみというユニークなパターン。サビのメロディが印象的。ここでの小室さんはシャウト気味に歌っている。間奏も、ちょっと聴きほんまにギターソロに聞こえるから凄いもんだ。
 ④はキーボード2人のみによる静かな曲。ピアノをバックにシンセがメロディを奏でているのだが、これがまた幻想的で美しい。なお、ジャズのスタンダードと同名だが、オリジナル曲。

 ⑤はバッハの曲「イギリス組曲のプレリュード」をアレンジしたもので、演奏は難波さんとそうるさんのみ。この荘厳でややこしい曲を弾きこなす難波さんの技術の高さには驚くばかりだ。しかも、随所でギターの音も出してるし。ただ、シンセ・ドラムの音が時代を感じさせるなあ…
 ⑥は玲衣さんとそうるさんのみの演奏。哀愁の感じられる曲だが、様々な音色を駆使して壮大な世界を展開する玲衣さんの技量もまた凄い。途中でドラムソロも少し入るが、それを叩くそうるさんの腕もさすが。でもやっぱり音色がこの時代のものなんだよな…
 ⑦はメンバー全員による演奏だが、本作で唯一玲衣さんが歌う曲。複雑な変拍子の上で歌われるヴォーカルは、A面で2曲を歌った小室さんにも劣ることなく、改めてその歌唱力の高さに驚かされる。
 そしてラストの⑧は、トランペットやストリングスも入ったスケールの大きな曲。玲衣さんのピアノと難波さんのシンセの対比が見事。最後はピアノで静かにフェイドアウトと思いきや、爆発音で締めくくられているのが面白い。

 …4人のメンバー全員で演奏されているのは全体の半数で、主役の難波さんすら参加してない曲があるのも不思議な気がするが、これは玲衣さんもクローズアップしようという意図だろう。そして作曲者のクレジットも、バッハの曲である⑤を除けば、①③④⑧が難波さん(その内③はK.C.ランキンという人との共作)、②がそうるさん、⑥⑦は玲衣さんで、⑥は難波さんを差し置いて玲衣さんが1人で全てのキーボードを弾き、⑦ではヴォーカルも担当というのは、彼がこのバンドでもかなり重要なポジションを任せられていたことがよくわかる。難波さんにしてみれば、「このままSOWにいてほしかったのにVOW WOWに行きやがって…」といったとこだろうが、後に難波さん自身がGENKI SESSIONにも参加することを考えれば、これは歴史の必然と言うべきかも知れない。
 玲衣さんをVOW WOWに取られたからと言ってその関係が悪くなったということは無く、92年には永川(敏郎)さんも交えて3人でセッションしたこともあり、00年には本作のCD再発を記念して玲衣さんを迎えたSOWのライブも開催されており、むしろ本作以来の絆がずっと続いているというのは喜ぶべきことだろう。

 難波さんはSOWと山下達郎を中心に、先述のGENKI SESSIONや、アコースティック・ピアノ中心のトリオ「A.P.J.」、鳴瀬喜博(Ba.)・是方博邦(Gt.)との「野獣王国」、五十嵐久勝(Vo.)・日下部正則(Gt.)等との「ヌーヴォ・イミグラート」、その他諸々の活動をしており、相変わらず多忙を極めている。かつては音楽活動の傍らに小説も書いていたが、今はどうなんだろう?大学の客員教授もやってる現状ではかなり難しいと思われるが…
 
 さて、私は関東にいた頃、本作を当時西新宿にあったディスクへヴンで見かけ、「いつか買わなきゃ」と思いつつ、実際買おうと思った時には店頭から消えていて、それから何年も手に入らずに悔しい思いをしてたんだけど、最近ようやく某オークションで新品が出品されているのを発見した。5000円という高値が付いてたが、私には許容範囲の上限くらいだったし、同時期に水樹奈々のDVD2巻を通常の売値より4000円も安く購入出来たということもあって、その金額でもあっさり落札したというわけ。本当は新たな再発を願ってて、難波さん本人にもその旨を直訴したことがあるんだけど、その予定も無さそうだったしね。まあ、12年前の廉価盤にしては音も現在出てる他のCDと比べて劣るということも無かったし、これはこれで良し。

 さあ、いよいよ残すところあと1枚だ。何が出るのか?それは次回のお楽しみ!

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① 仰げば尊し/山本恭司
② われは海の子/小沼ようすけ
③ 故郷/西慎嗣
④ 花/石原慎一郎
⑤ 浜辺の歌/野呂一生&天野清継
⑥ 赤い靴/小野瀬雅生
⑦ 夕焼け小焼け/原田喧太
⑧ 荒城の月/Syu
⑨ おぼろ月夜/青木秀一
⑩ さくらさくら/ICCOU
⑪ 君が代/山本恭司


 12年2月に発表された、恭司さんのプロデュースによる日本の唱歌・童謡をいろんなギタリストが弾いたインストのオムニバス・アルバム。

 本作の主旨は、誰もが小さい頃に馴染んだ楽曲を様々なジャンルで活躍するギタリストたちが奏で、日頃忘れがちな「日本の心」を思い出してもらおうというものだったと思う。そんなわけで、集まったギタリストたちも豪華なら、選ばれた曲もまた郷愁を誘うものばかり。学校の音楽の授業を思い出す人も多かろうことと思う。④が一瞬「何の曲?」と思う人もいるかも知れないが、♪春のうららの隅田川~です。

 じゃあ、早速恭司さんの弾いた曲から行っちゃいますか。

 ①がいきなり卒業式の定番「仰げば尊し」って、「蛍の光」で始まった井上陽水の「UNDER COVER」じゃないんだから…おまけに、前半はどんどん感情がこもってと言うかヒートアップして、原曲の形を留めないくらいに弾きまくって「おいおい、この調子でええんか?」と心配してたら真ん中辺でチャイムの音とピアノの伴奏で懐かしい風景に引き戻され、そこからは半分くらい原曲に戻って穏やかにメロディを奏で、静かな余韻を持って終わる。

 それに続く他の曲だが、アコースティックで穏やかな②⑤⑩もいいし、③がブルース調に変身しながらも原曲の素晴らしさ(私はこの曲が何気に好きだったりする)を保っているのも良い。シャラが歌うようなメロディを聴かせる④とか、いかにも打ち込みなリズムをバックにした⑥なんかも面白い。
 でもねえ…最初は静かでいい感じなのに途中でハードに展開してアドリブ連発の⑦あたりは恭司さんの①もそんなに変わんないからいいとして、⑧はちょっといただけない。いくらSyuがガルネリウスでの速い曲や速弾きソロで「新世代のギター・ヒーロー」(つってももう30過ぎたけど)と呼ばれてるからって、このスピード・メタルな展開は無いでしょ。彼はスローな曲、哀しい曲でも無駄な速弾きをせずに情感たっぷりに弾ける人なんだから、その辺も考慮して終始スロー・テンポにしてほしかった。そうした方が「若いのに(つっても30過ぎだけど)味のあるギター弾くねえ」って声が聞かれたかも知れないのに。終始スローな方が良かったのにと思うのは⑨も同じ。ギター以外も全て本人による演奏らしいけど、オルガンとのバトルやベースソロまで入れる曲じゃないのに…
 まあ、そういう奇抜なことをやってる曲もあるけど、アコースティックな曲を入れてる位置がいいからか、アルバム全体としては良い流れだと思う。

 そして再び恭司さんによるラストの⑪は、昔カルメン・マキ&OZやラウドネスもライブアルバムに入れてたが、スタジオ作品に入れるってのは意外に珍しいかも。実は昨年の「弾き語り・弾きまくりギター三昧」で既に披露してくれてたが、厳かに奏でられるメロディをじっくり聴くと、やっぱり日本の国歌としてこれ以上ふさわしい曲がありますかい?と思える。ほんま、日本人に生まれて良かったよ…

 というわけで、一部アレンジがあんまりいただけない曲もあるけど、やはり元が幼い頃から聴き馴染んだ曲ばかりとあって、心はすっかり少年時代にタイムスリップ…なのであった。

 さて、本作が今のところ恭司さんの参加した最新アルバムなんだけど、実はこの「六弦心」は第2弾も既に企画が進んでいるらしく、次作への参加メンバーの選考&呼びかけもされてるらしい。
 更に恭司さんはもう1枚企画アルバムを作っていて、これは東日本大震災のチャリティーのためのもので、和楽器や世界各国の民族楽器とのコラボ作品だという話は昨年末から聞いていた。そして今年3月の時点でジャケットも出来ており、「間もなく発表されます」ということだったが、6月7日現在でまだ出てないのだが…こちらも待ち遠しいところなので、早く発表してほしいものだ。

 そんでもって、現在の恭司さんは一連のV復活イベントの前後から以前にも増して様々な形態でのライブを行っており、Bもワイルド・フラッグもやりつつ、西野やすしや安達久美といった人たちとのセッション、佐野史郎の朗読とのコラボ「小泉八雲の世界」、そして全て恭司さん1人での「弾き語り・弾きまくりギター三昧」がその活動の中心になってきている。全て1人でというのはフットワークが軽くなるので全国各地を回れるし、それだけ生の恭司さんを観れる機会が増えたのは嬉しいのだが、その分バンドでのライブが減ってきているのは惜しい気がする。ワイルド・フラッグは年に数回ずつだから以前に比べれば増えているのだが、Bのライブが年々少なくなって、東京で秋に開催の「SUPER LIVE」とあと少しだけというのが何とも寂しい…というのは前にも書いたか。
 「弾き語り・弾きまくりギター三昧」は、前半がアコースティック1本での弾き語り、後半は打ち込みをバックにエレクトリックでソロアルバムからのインスト曲を中心に披露…というのがその中心スタイルだが、場所に応じて各地のミュージシャンをゲストに迎えてのセッションもあったりで、毎回違った趣向を凝らして楽しませてくれている。恭司さんのギターの持つ深い味わい、そして(私は昔から好きだけど)その歌声の魅力もたっぷり感じ取れるので、Vから入った人も是非一度体験してみてほしいと思う。意外と、それまで恭司さんを全く知らなかった人たちにも好評で、回を追うごとに動員数も増えているんだから、先入観が無い分すんなり受け入れてくれる人が多いということだろう。
 
 
 …本作が恭司さんの参加した現時点での最新作ということは、玲衣さんも元基さんもそれぞれ最新作を紹介済みだし、じゃあ今回でこのシリーズ終わり?となりそうだけど、実はもう少し続きます。
 バンドや個人の歴史に沿ったストーリーもアルバムの内容の解説と同時に展開してきて、それは確かに今回で終わりなわけだけど、本来紹介すべき時期にまだ持ってなくて、その後になってようやく入手出来たものもあるわけで…それらをあと2枚紹介します。それでようやくこのシリーズも本当におしまい、となるわけ。
 じゃあ、あと2枚分お付き合いをよろしくお願いします。

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① エンケンがやってくる!
② 俺が死んだ時
③ ブルースに哭く
④ ア!ウ!
⑤ 心の奥まで抱きしめて
⑥ もうちょっとだけ頑張ってみようかな-2011年3月14日月曜晴れ-
⑦ 為に、音よ言葉よ俺の心に突き刺され
⑧ ちゃんとやれ!えんけん!
⑨ 夢よ叫べ-2011-
⑩ 美しい女


遠藤賢司:Vocals,Guitars,Piano(⑥⑩),Drums(⑧),Harmonica(⑤⑦)
山本恭司:Guitars(①⑨)
満園庄太郎:Bass(①④)
湯川トーベン:Bass(②③)
大塚謙一郎:Bass(⑤)
満園英二:Drums(①④)
石塚俊明:Drums(②③)
森信行:Drums(⑤)
高遠彩子:Chorus(④)
吉地里江:Chorus(④)


 キャリア40年以上に及ぶ大ベテラン・遠藤賢司の12年1月発表の最新作。

 この人について解説するのは私ごときには到底無理。だって、本作を買うまでほとんどまともに聴いたことが無いから。「カレーライス」という歌が有名なフォークシンガーというイメージが強いけど、あの歌は71年の発表だっけ?Wikipediaでこの人のことを調べてみたけど、読んでる内に気が遠くなってきた…ってくらい、実はそれからも精力的に、しかもフォークのイメージにこだわること無く自分のスタイルを変えて創作し、歌い続けてきたようだ。言われてみれば、私が高校生の頃だっけ?「オムライス」ってミニアルバムを出してた記憶があるけど、それには細野晴臣や越美晴が参加して、かなりテクノな作品だったらしいし、その辺からも一つの場所に留まらずに変化を求める姿勢が垣間見えたりする。
 で、そういう姿勢が共通してるからか、「日本のニール・ヤング」とも呼ばれてるらしい。私はニールのこともよく知らないが、この人もフォーク系のイメージが強いけど、80年代にはテクノに挑戦したかと思えばその次の作品でロカビリーをやってみたりと、毎回ファンを驚かせていたそうだから、「なるほど」とは思う。

 さて本作、私が購入するに至ったきっかけというのは勿論、恭司さんと満園兄弟、つまりワイルド・フラッグのメンバーが3人とも参加してるからなんだけど、3人が一緒に演奏してるのは①のみ。で、この曲は1分少々のインストで、アルバム全体の序曲といった位置づけのようだ。とは言っても3人のみの演奏ではなく、エンケンさんも演奏に参加している…しかも、エレクトリック・ギターで!彼のファンなら別に驚くことではないかも知れないが、フォークのイメージを強く持ってた私なんかにはかなりの驚きだった。

 そう、彼は本作のほとんどの曲でギターも自分で弾いているのだが、①②③④⑤⑦⑧でエレクトリックを弾いているのがまず最初の驚き。で、アコースティックも⑤⑨で弾いているが、ハーモニカも吹くのはそう驚くことではないにしても、⑧ではドラムを叩き、⑥⑩ではピアノまで弾いている。いろんな楽器を演奏出来るんだというのが第2の驚きだった。⑩はアルバムのラストを美しく締めくくるインストなんだけど、最初と最後の曲では歌ってなくてもしっかり演奏してて、つまり本人が参加してない曲というのは全く無いということになる。

 そして第3の驚きは、とにかくアルバム全編がハードにロックしてること。で、意外なことにそういうハードな曲が多いのに、ハードなヴォーカル曲に恭司さんが全く参加しておらず、ギターがエンケンさん本人のみで、ソロも本人が弾いているというのが第4の驚き…とにかく驚き連発のアルバムなんだな。
 満園兄弟は④にも参加しているが、やはり彼らのパワフルさは本当に大したもんだ。他の曲に参加してるトーベンさんとかと比べても全く遜色が無い。

 エンケンさんの歌というのは、うーん、上手い下手とかいう話じゃなく、とにかく独特の味がある…としか言えない。これが合わないという人も多いかも知れないが、私は意外にはまってしまった。
 演奏の方も歌と同じく、細かい理屈はどうでもいいって感じのはっちゃけぶり。⑧のドラムなんか、リズムを刻むってもんじゃなく、本能のままにぶっ叩いているって感じだな。かと思えば⑥のピアノ弾き語り(これが文字通り、ピアノをバックに「語って」いる)では、とても繊細な演奏を聴かせてくれている。でも、終盤は思いっ切り不協和音の連発になるのがこの人らしいところなのかな?

 さて、恭司さんがもう1曲弾いてる⑨は、昔の曲の新バージョンのようだが、これがエンケンさん本人によるアコースティック・ギター弾き語り(これは「語り」じゃなくて「歌って」いる)のソロのみを恭司さんがエレクトリックで弾くという珍しいパターンだが、ここでの恭司さんは見事な泣きのソロを聴かせてくれている。掻き鳴らすギターは本人がやってしまえても、やっぱり「泣き」となったらその道の達人に任せてみたというところか。結果、非常に感動的な曲に仕上がっている。
 
 全編通して40分に満たない短い作品だが、聴き応えは十分。しかもこの人、今年で65歳なんですと!これが第5の驚き…お後がよろしいようで(笑)。

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① 翔べ!ガンダム/DEPAPEPE
② ~interlude~長い眠り/鈴木Daichi秀行
③ シャアが来る/田川伸治
④ いまはおやすみ/山本恭司
⑤ ~interlude~サブタイトル/鈴木Daichi秀行
⑥ きらめきのララァ/冨田勇樹
⑦ 永遠にアムロ/押尾コータロー
⑧ ~interlude~ザビ家参集 M-46/鈴木Daichi秀行
⑨ 砂の十字架/手島いさむ
⑩ スターチルドレン/小沼ようすけ
⑪ ~interlude~戦いへの恐怖/鈴木Daichi秀行
⑫ 哀・戦士/押尾コータロー
⑬ 風にひとりで/DAITA
⑭ ~interlude~ガンダム起動/鈴木Daichi秀行
⑮ めぐりあい/マーティ・フリードマン
⑯ ビギニング/SUGIZO


 09年12月に発表された、「機動戦士ガンダム」の音楽をいろんな人がアコースティック・ギターで弾いたオムニバス・アルバム。

 09年12月と言えば、そう…「アックスの奇蹟」開催の月でしたね~。それで気持ちが舞い上がって本作までチェックが及ばなかったのもあるし、この前後は個人的にゴタゴタしてた時期でもあったしね。それに、気持ちが落ち着いて本作の存在を知っても長いこと「どうせ恭司さん参加つっても1曲だけだし、『ガンダム』の音楽よう知らんし」と思って買ってなかった。今年になってようやく、「V関係者の参加作品は可能な限り集める!」と決めてようやく入手した…というわけ。

 さて本作、曲目をご覧になっておわかりの方も多いだろうが、TV1作目と初期の映画版からの音楽を中心に作られている…なんて偉そうに書き始めてみたが、実は私、「ガンダム」はほとんど観ていない。TV1作目を少し観ただけで「これは俺には合わん」と思って断念、だからその後の映画も観てないし、当然それから続々作られた新シリーズなんか知るわけもない。その要因は、それまでのSFアニメみたいに単純な勧善懲悪ものではなく、ストーリーが複雑で重いと感じられたからではなかろうか?それ以前の「コンバトラーV」「ボルテスV」「闘将ダイモス」あたりから、敵にも魅力的なキャラが作られ、ストーリーに深みを持たせた作品はあったけど、それでもまだ一応、メインはロボット同士のバトルだったりユーモラスなキャラがいたりして、シンプルに楽しめたんだけど、中学生になったばかりの私は微妙な年頃だったから、「ロボットが出てきて戦う話なんか観てる年じゃないかなあ」と思う反面、「そんな話にしてもちょっと難しいぞ」と思ったりして、熱心に観れなかったのかも知れない。まあ、吹奏楽部が忙しくて放送してる時間帯には家にいなかったのかも知れないし。その辺は記憶があやふや。

 で、実際本作に参加してる人たちも、「ガンダム」には思い入れのある人、特に思い入れも無い人と様々。これに関して、「作品に思い入れの無い人が参加してるのは如何なものか」と言う人もいるが、そんなこと言ってたらプロレスの入場テーマなんか、格闘技を全然知らない人が作ったり、全く関係ない既存の曲を使うことだって多いでしょ?ミル・マスカラスのテーマ「SKY HIGH」なんか、失恋の歌でっせ?だから、その辺は深く考えなくて良いのでは?

 更に、演奏者も元からアコースティックの人と元はエレクトリック中心の人が混在しており、これに関してもとやかく言う人がいるけど、ええやんとにかくこういう面白い作品が出来たんだから。普段エレクトリックの人でもアコースティックでいつもと違う面を出してるのを聴いて、「こんなことも出来るんだ~」と思ってもらえれば、ね。

 そんなわけで、恭司さんやらDAITAやらマーティやらSUGIZOみたいな人たちも混じってるけど、皆さんがそれぞれ個性的なプレイをしてるのがなかなかいい感じ。
 基本的には、どの曲もアコースティック1本もしくは重ね録り。①のDEPAPEPEは2人組だから2人で掛け合いみたいになってるけど、このコンビは上手いよなあ…
 で、「interlude」各曲を弾いた鈴木秀行以外は全員が1曲ずつなのに押尾コータローのみが2曲なのは、本作の発売元であるソニー所属だからだと思うけど、やっぱりその腕前も評価されてのことだろう。さすがにそれ一筋の方のプレイは違いますわいな。穏やかな⑦、軽快な⑫という全く違うタイプの曲を見事に弾き分けているのはさすが。

 そんで、恭司さんの弾く④なんだけど、元々穏やかな曲を実に優しく、情感たっぷりに弾いている。やっぱり随所でいつもの「泣き節」が見え隠れするのはこの人の個性だよなあ…インストのソロアルバムを何枚も作ったことが影響したのか、若い頃のアコースティック1本の曲よりずっと味わいが増しているように思う。

 原曲を歌ったやしきたかじんが「俺はあの曲嫌いや」と公言している⑨も哀感たっぷりでいい感じだし、⑯ではバイオリンが?と思ったら、これはSUGIZO自身の演奏だった。

 まあ、元をほとんど知らない私でも各プレイヤーの演奏の見事さで最後まで飽きずに聴けるんだから、「ガンダム」の音楽の好きな人、そしてアコースティック・ギターの好きな人なら楽しめるんでないかい?と思うんだな。

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① DON'T STOP BELIEVIN'/JOURNEY
② I WAS MADE FOR LOVIN' YOU/KISS
③ THE BEST OF TIMES/STYX
④ THE FINAL COUNTDOWN/EUROPE
⑤ EYE OF THE TIGER/SURVIVOR
⑥ WALK THIS WAY/AEROSMITH
⑦ SISTER CHRISTIAN/NIGHT RANGER


山本恭司:Guitars,Keyboards,Bass(②⑥),Percussion(①⑥),Chorus(①④⑥)
末原康志:Guitars(①④⑤),Bass(①)
渡辺香津美:Guitars(②)
押尾コータロー:Guitars(⑥)
国府弘子:Piano(③)
ヤヒロトモヒロ:Percussion(②)
田中倫明:Percussion(④)
美底マサノリ:Vocals(①④⑦)
MONDAY満ちる:Vocals(②),Flute(②)
マリーン:Vocals(③)
二井原実:Vocals(⑤)
ANNA VIESTE:Vocals(⑥)


 09年1月発表の、恭司さんが中心になって制作された洋楽ロックの名曲をカバーしたアコースティック・アルバム。

 この時期は、VOW WOWのメンバーが3人出演の「サンフォニックスの奇蹟」が翌月に控えてるからと舞い上がっていたんだけど、そんな中でも私は新譜のチェックも怠っていなかった。恭司さんのソロは04年、BOWWOWとしては05年、シルバー・スターズとしては06年にアルバムを出してたんだけど、それからライブの方は精力的に開催してたものの、レコーディング作品は途絶えていた。まあ、ライブアルバムやらベストアルバムやらは出てたんだけど、純粋な新作となったら随分ご無沙汰だった。それは玲衣さんも元基さんもなんだけど。
 で、ようやく何か出るというニュースが入って、それがこれだったんだけど、カバー集だしアコースティックだし、おまけに曲数少ないしで、ちょっと肩すかしかな~と思ってたんだけど、これがまた実に面白い作品である…というのは最近改めて気付いた。

 まずは選曲なんだけど、元はほぼ全てがハード・ロック・バンドの曲。それをアコースティックでやってしまうという発想も面白いし、参加メンバーも豪華。それは上に書いた通りなんだけど、他に③⑦で弦一徹を中心にしたストリングスも加わっている。

 さて、今回気になったのが①④⑦を歌う美底マサノリというシンガー。①でいきなりスティーヴ・ペリーそっくりの歌声で驚かせてくれるし、哀愁漂う④やバラードの⑦でも見事な歌唱を聴かせる。こんな素晴らしいシンガーが一体どこに隠れていたんだ?と当時は思ったものだった。
 元がディスコ調だった②をボサノバにしてフルートまで入れてしまうのにも驚いたし(しかもクリーンな女性ヴォーカル)、他の曲も結構大胆にアレンジされているが、原曲の良さを損なっていないのはさすが。
 ②と言えば渡辺香津美の参加も目を惹くところ。彼はナイロン弦、恭司さんはスチール弦なんだけど、バッキングは主に香津美さんだろう。ソロは間奏が恭司さん、エンディングが香津美さんだろうか?とりあえず、私の耳にはそう聞こえました(笑)。
 ③はピアノとストリングスをバックにマリーンが歌い、恭司さんがエレクトリックでソロやオブリを入れているが、これがまた味わい深くて良い。都会的で洗練されたアレンジなんだけど、恭司さんのソロはやはりしっかりその個性を主張している。
 ⑤の二井原さんも、この曲でしかもアコースティックで…合うのか?と思ったけど、なかなかいい感じにはまっている。
 ⑥は今や日本を代表するアコースティック・ギターの名手・押尾コータローとの共演。両者がアコースティックだったら面白いと思ったけど、それじゃ聴く方は区別がつかんと思ったのか勝負を避けたのか、アコースティックは押尾さんに任せ、恭司さんはエレクトリックのみを弾いている。さすがにソロはいつもの恭司節。押尾さんはほぼバッキングのみだが(でもあちこちで小技を効かせている)、両者の掛け合いソロなんかもあったらもっと面白かったのに。

 恭司さんがアコースティックを中心に弾くというのも珍しいというか、今までレビューした作品を思い返せば、アルバム全編というのは恐らく今回が初めてかも知れない。でも、バッキングもソロもやっぱり素晴らしくて、つくづくこの人は只者ではないな~というのを改めて感じさせてくれる。

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① SCARBOROUGH FAIR/SIMON & GARFUNKEL
② BRASS IN POCKET/PRETENDERS
③ MOTHER NATURE'S SON/BEATLES
④ TIME AFTER TIME/CYNDI LAUPER
⑤ DESPERADO/EAGLES
⑥ SWEET HOME ALABAMA/LYNYRD SKYNYRD
⑦ TAKE ME HOME,COUNTRY ROAD/JOHN DENVER
⑧ YOU'VE GOT A FRIEND/CAROLE KING
⑨ I NEED TO BE IN LOVE/CARPENTERS
⑩ THE ROSE/BETTE MIDLER

⑪ BITTER FLAVOR ROAD


 さーて、ようやく手に入ったことだから書きます!の、鬼束ちひろ初の洋楽カバー・アルバム。

 発売前から収録曲は公表されていたんだけど、昨年末のライブで歌った④⑩が入ってるのは想定内だったとしても、割とベタというかヒネリの無い選曲に、逆に「あれっ?」と思わされた。彼女だったら、「誰の歌やねん、それ?」みたいなのとか、「何でこんな曲を持ってくるかね?」っていうのを想像してたんだが…特に近年の彼女を思えば余計に、ね。
 で、発売間もなくその感想もいろいろ読ませてもらったが、賛否両論だったなあ。思ったよりライトな感じだったとか胸をえぐる感じが無いとかいうのはまだいいとして、声が出てないとか、ひどいのになったら「もう終わったなあ」「聴くに堪えない」なんて声も…

 まあね、感じ方には個人差があるからいちいち気にしてたらキリが無いし、前作「剣と楓」も最初聴いた時は「何だか変わったなあ」と思ったもんだけど、ライブでピアノ1台をバックに歌ったのを聴いて心に染みた曲もあって、改めて聴き直せば「やっぱりいいアルバムだ」と思ったもんだから、とにかくゴチャゴチャ言わずに聴いてみよう!と早速聴いてみたが…

 いいんじゃないっすか?これ。

 確かに壮絶な曲とか哀感のある曲ってのはほとんど無く、割と明るめの曲が多いけど、やはり歌声の魅力は失われていないと思う。アレンジも奇抜だとか大胆に変えたとかいうものも無く、知ってる曲は原曲に忠実だったり、よく知らない曲もその持ち味を壊さないものだったりして、あんまり「冒険」はしていない。歌い方も丁寧だし。そう言ってしまえば、気軽なBGMとして聴けるのかと思われそうだが、聴いてて温かい気持ちになるというか、心洗われるような感じがしてきて、やっぱり最終的には聴き惚れてしまうんだな。冒険してないって書いたけど、①は全く伴奏なしの1人多重録音アカペラで、これがまたいい感じに仕上がっている。⑥とか⑦とかはいかにもアメリカンで、ちょっとイメージとは違う気がするけど、1stアルバムでもカントリー調の「We can go」なんてあったし、それを考えたら別に意外では無いのかも。
 でもやっぱり、彼女の魅力が最大限に生かされるのはバラードだよなあ…ってことで、⑧のキャロル・キングとか⑨のカーペンターズあたりが特に気に入ったのだった。そして本編ラストを締めくくる⑩はやっぱり感動するなあ…

 というわけで、あくまで「番外編」だから大絶賛!とはいかないけど、結局は本作もまた素晴らしいアルバムだと思えるのだった。

 そうは言っても…鬼束オリジナルの⑪はやっぱり入れない方が良かったと思うぞ。⑩で終わっておけば深い余韻に浸れて最高だっただろうに。

 そして余談だが、個人的にはやっぱりVOW WOWやテラ・ローザ、カルメン・マキなんかを歌ったカバー第2弾も出してほしいと思うのであった(しつこいって?)。

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